第四章
[8]前話
「巨人のことでは」
「だって嫌いだから」
「僕もだよ」
「巨人が負けるならね」
「こんないいことはないじゃない」
「全く、変なことだけ同じなんだから」
二人の返事に呆れて返す母だった。
「野球のことでも」
「じゃあお母さん巨人好き?」
異端かどうかを尋ねる目でだ、千佳は母に尋ねた。
「まさかと思うけれど」
「お母さんも阪神よ」
「じゃあいいじゃない」
「あんた達みたいに嫌いじゃないのよ」
巨人がというのだ。
「それで阪神もカープもね」
「私達みたいにはっていうの」
「好きじゃないわよ、どうしてそこまで好きになったのよ」
「だって好きだから」
「理由なんてないよ」
またしても答えた二人だった。
「自然と好きになったんだよ」
「そうだからね」
「やれやれね、あんた達本当によく似てるわ」
「そう?」
「そうかな」
千佳も寿もお互いを見て母にいぶかしく声で返した。
「僕千佳とは似てないよ」
「私もよ」
「千佳はカープだから」
「お兄ちゃんは阪神じゃない」
「全然違うよ」
「何処が似てるのよ」
「応援しているチームが違うだけよ」
母は笑って自分の子供達に答えた。
「それこそね」
「そうかしら」
「それって全然違うと思うけれど」
「それだけが違うっていうのよ」
母が言うことは千佳のクラスメイトと同じだったが千佳も寿もそれでも自分達はそれぞれ全く違うと思っていた。そうしてそれぞれの贔屓のチームを熱く応援し続けるのだった。まさにその人生を賭けて。
兄妹の巨人への思い 完
2017・10・23
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