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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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、かなり精神的な負担が少ない。したがって、他ゲームの追随を許さないほど高精緻な物理エンジンと描画によって作り出された《出血》という現象に、黒の王であっても心が揺れたのだ。
だが、対して。
謎の少年は何でもないというように、べろりと舌を伸ばし、血の珠を舐めとる。
そして顔を上げ――――
「
ュ
(
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鯣
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」
………………………………………………………………………………………………………………………………………あ?
一瞬、黒雪姫は自身の耳がおかしくなったかと思った。いや、この場合実際の聴覚や鼓膜の類は使用されていないので、ニューロリンカーと接続した自身の生体脳を、ということになるか。
決して理解できない言語を、眼前の少年が喋った……のではない。
そういったアナログチックなコミュニケーションのすれ違いではない。もっと深く、複雑な、システムレベルでの食い違いのような何か。
―――これは……、音声データがクラッシュしたようなものか……?いや、何か違う。どちらかと言えば、マイクとスピーカーのデータフォーマットが違うような……。
だが、考えても始まらない。
音声自体は理解不能な状態だが、この流暢な口調からショップにいる加速世界でも数少ないNPCという線も薄そうだ。少なくとも、中に明確な意思を持つ一個人がいる。
意を決し、黒雪姫はこちらを見上げてくる大きな瞳を見据え、口を開いた。
「貴様は何者だ?どうやって梅郷中のローカルネットに侵入した?」
色々と聞きたいことはあったが、まずはそこからだ。同じレギオン員以外は絶対にできない、黒雪姫への対戦乱入。まずはここから紐解いていかねば、今後の学生生活の中で枕を高くできない。
しかし、少年はきょとんと首を傾げるだけだ。眉根を寄せ、自分の耳を確かめるようなそぶりを見せる。
同じだ。おそらくこの少年にも、黒雪姫の声自体は届いている。だが、こちら同様、あちらも音声が判読不能な状態で固定されているのだろう。
これでは話もできない。
どうしたものか、と何度目かの硬直を強いられる。
すると、そんな黒雪姫の反応をどう捉えたのか、好奇心旺盛というようにこちらを見つめる瞳がゆっくりと細められ、口端が死神の鎌のように持ち上がって――――
そして。
ピン、と。
その鼻先に突き付けられた剣先が、その一切の挙動を封じた。
一瞬先に不穏なものを感じ取った黒雪姫が、突き刺すように掲げた左腕の先だ。
「…………」
「すまないな。こちらとしても失念していた。……たとえ言葉が通じなくとも、ここは対戦の場。この場に降り立ったが最後、あるのは闘争しかないと言うのにな」
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