IS 〜from another〜 01
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IS 〜from another〜 01
《首輪付きの野良猫》
「ヴォォォォォォ!!」
獣の様な唸り声を上げて彼は、否、“彼等”は雲霞の如く押し寄せる“敵”の大群に遅い掛かる。
戦力差は圧倒的。だが、恐怖に駆られているのは寧ろ大群の方。未だ射程まで距離があるにも関わらず、ある者は狂った様に火砲を乱射し、またある者はプレッシャーに耐えかねて遁走する。
踏み留まっている者達も皆、あまりの重圧に歯の根が噛み合わず、全身の震えが止まらない。嘔吐や果ては失禁する者まで少なからず現れたが、それを咎められる人間などいなかった。
「ば、ば、ば、化け物が!!?」
恐怖に堪えかねた一人が前に飛び出す。相対距離がぐんぐん縮まり、そして、
“彼等”は、まるで蟻でも踏み潰すかの如く、一切の抵抗を許さず、それでいて少しも関心を持たずに叩き潰した。
飛び出した者は瞬時に絶命し、何が起こったのか理解することすら無かった。
“彼等”は、そのまま敵陣に突っ込むとただひたすらに蹂躙した。美しさや気高さすら感じる破壊の狂宴。その中心で、“彼等”はただ淡々と前に進む。
そういくらも経たない内に大群は姿を消し、後には骸の山が残った。しかし、それまでに“彼等”が築いてきたそれに比べれば、あまりにも僅かな量が加算されたに過ぎなかった。
『史上最も多くを殺した個人』、『人類種の天敵』……滅びを告げる黒き野良猫は、次なる獲物を求めて徘徊した。
どれ程経ったのだろうか。“彼等”は殺す度に己を磨り減らし、とうとうその摩耗は己という存在を消し去る所まで来ていた。それでも“彼等”は止まらない。否、止まれない。己が見出した“答え”の為に。
武器は砕け、翼は折れ、脚が潰れて腕が千切れた。全てを失った“彼等”、否、“彼”は、その時、初めて笑った。
「あばよ、セレン。…………ありがとな、《相棒》。」
たったそれだけを絞り出すと、彼は静かに意識を手放した。確かな満足と、大きな寂寥と、ほんの少しの後悔を抱きながら。
最後のリンクスにして人類史上最悪の厄災はこうして滅んだ。数多の絶望を雲の下に、ほんの僅かな希望を星の海に残して。
“彼”の“答え”は成された。………成された、『筈だった。』
ーーーーーマダダヨ。マダ、オワラセナイヨ?
「………っ!?」
飛び起きた俺は即座に周囲を確認する。そこは硝煙香
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