第二十五話 最後の修行その四
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「天命の時が来た者が思うことでだ」
「そうでないのなら」
「先がある」
「そしてその先にですね」
「向かい入るべきなのだ」
こう譲二に言うのだった。
「必ずな」
「そして天命の時まで、ですね」
「全力で生きるべきだ。そして」
「魂の輪廻から出るまで」
「己の生の中で懸命に務めてな」
「魂の修練に励むもの」
「だから今もだ」
譲二のこの世界での生もというのだ。
「励むのだ、いいな」
「わかりました」
確か声でだった、譲二も頷いた。そして老師は英雄達三人にあらためて言った。
「では何かあれば」
「その時はでござるな」
「この寺に参られよ」
こう言うのだった。
「是非」
「わかり申した」76
正が応えた。
「そうさせて頂きます」
「そして何かあれば」
「話をですか」
「聞かせてもらいたい」
これが老師に三人への言葉だった。
「何かあれば相談に乗れるやも知れませぬ」
「だからですか」
「はい、是非」
困ったその時はというのだ。
「お話させて頂きたい」
「それでは」
正がまた応えた、そして三人は老師に最後に一礼し老師も返礼してそうしてそれが別れの挨拶となってだった。
三人は寺を後にした、そして寺を出たところで英雄は二人に言った。
「では次はな」
「三人目の御仁でござるな」
「そちらに行くが」
「陰陽師でしたな」
「そうだな、陰陽道か」
「英雄殿はご存知でしょうか」
陰陽道はとだ、正は英雄に問うた。
「あの道のことは」
「名前や歴史は知っているが」
それでもとだ、英雄は正に答えた。
「こちらの世界のことは知らない」
「そうでござるか」
「おそらく術の形態は同じだと思うが」
「歴史は」
「やはり違うな」
「はい」
そうだとだ、正も答えた。
「左様でござる」
「俺達の世界での陰陽道には安倍晴明がいた」
歴史に名を残す実在の人物だ、今昔物語集にも逸話が収められている。
「土御門家もあったな」
「しかしでござる」
「この世界にはいないな」
「はい、陰陽道は同じでもでござる」
「その歴史が違うからな」
「こちらの世界はこちらの世界の歴史があるでござる」
陰陽道もというのだ、このことは他の世界でのことだけではない。他の事柄についても同じことだ。
「ですから」
「そこは違ってか」
「また別の歴史があるでござる」
「こちらの世界でも恐るべき陰陽師がいました」
譲二も話してきた、三人で都の道を歩きながら。道を歩く人の姿も都にしても多くはない。
「松本道節という御仁が」
「はじめて聞く名だな」
「そうですか、この島ではです」
「陰陽師としてか」
「歴史に名を残しています」
そこまでの者だというのだ。
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