94終わりの始まりの悪夢
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、汚染物質である祐一に近付き、美汐に声を掛ける勇気ある少女がいた。
『おはよう、みんな聞いて。相沢さんにヒーリングの力があるのは聞いてるでしょ? 実は私も不治の病を患っていたの、でも、美坂さん達と同じように、私も助けて貰ったのよ』
「「「ええっ?」」」
こうしてあちこちで術を使い「三又最低男」と呼ばれていた祐一を、三たび「奇跡の恋」の主役に変えて行った美汐。
ちょっとやりすぎて祐一の信者を作ってしまい、体の弱い女生徒が、祐一の「お注射」をせがんで来たが、それも術を使って解散させた。
それから、学生の噂でも聞き付けたのか、病人の家族がいる人達が祐一の居場所を探し出して学校まで来ていた。
まだ学生以外の人物でも入場できた時代だが、教室のあるフロアまで登ろうとして見咎められ、学校関係者と揉めていた。
「一度お話だけでもさせて下さいっ、うちの子の命も救ってやって下さいっ!」
「うちの生徒にそのような者はおりません、お気持ちは分かりますが、そんな迷信をお信じになられない方が良いと思います」
「そこを曲げてどうかお願いしますっ」
「「「「お願いしますっ」」」」
「せめて連絡先だけでもっ」
「それもお教えできません、どうしてもと言われるなら、学校の外で本人にご相談下さい、その時も本人やご家族に迷惑が掛からないようにお願いします」
「「「「はいっ」」」」
自分の子供の命が掛かっている時、他人の迷惑など考えている余裕など無い。
例え深夜でも早朝でも押しかけて、話ができなければ家の前で何日でも待つ者が現れるのが普通で、こうして水瀬家は、新たな混乱に巻き込まれて行った。
その騒ぎを聞いて、病人の家族の中に歩いて行こうとしたた祐一の肩を掴み、止める人物がいた。
「…待って」
「どうした? 舞」
「…やめておいた方がいい、多分、10人も治せば手足に力が入らなくなって倒れる。 …その後で治らなかった奴は必ずこう言う「嘘つき」「詐欺師」って」
「え?」
まるで同じ経験があったかのように忠告する舞を見て、疑問符を浮かべる祐一。
「その次も決まってるっ「化け物」「悪魔の子」って言われて、奇跡が起こらなかった奴らの家族に、子供や親の敵みたいに追い回されて訴えられるっ、命が惜しかったらやめてっ」
いつもよりずっと饒舌で、激しい口調で言う舞に押され足は止まったが、なぜそこまで感情的になるのかわからなかった。
「何で、そんな事言うんだ?」
「…私も昔、同じだったから」
目をそらしながら、ついに自分の過去を教えた舞。 祐一にだけは同じ思いをさせたく無かったらしい。
昼休み
暖かくなった中庭で、祐一を待っていた栞と香理。
「おう、待たせたな」
「祐一さん?」
春の校庭では、何故か木枯らしが吹き抜けて行った
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