第十五幕:ふたつの虹と一緒に
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昨日は、布団に入ってもなかなか眠れなかった・・・。考え事をしていたからだ。七夏ちゃんが起こしに来てくれて、朝食を頂いて・・・これが「いつもの事」のようになりつつある喜びとは裏腹に、気になる事も大きくなってくる。光が明るく強くなれば、落ちる影も、よりはっきりと形作られるという事だ。俺は七夏ちゃんに今の心境を悟られないよう、足早に自分の部屋に戻ってきた。
一緒に居ると、分かる事と、分からなくなる事がある。民宿風水でお世話になり一週間。ふたつの虹を持つ七夏ちゃんの性格が、ある程度分かってきたつもりではいたが、その本心は分からなくなってきている。近づき過ぎると見えなくなる事以外にも、一緒に過ごす時間が長くなると、見えなくなってくる事もあると言えるのかも知れない。全てを知りたいと追い求めるのは、贅沢な事なのだろうか?
七夏ちゃんの事をもっと知れば、結論が出るのかも知れない。とにかく、ここでの明確な目的が見えてきた事は確かだ。七夏ちゃんの笑顔の写真を撮って、アルバムを作る事。その為には、七夏ちゃんにとって、本当に楽しくて幸せに思ってもらえる事を探す必要がある。
七夏ちゃんにとって、幸せな事とは、何なのだろうか?
とにかく、七夏ちゃんと一緒に過ごす時間を増やせば、見えてくると信じたい。
しばらく考えて、気持ちの整理も出来たので「いつもの事」のように、七夏ちゃんの顔を見にゆくことにする。
居間へ移動すると、七夏ちゃんが何かを作っているようだ。
時崎「おや? 七夏ちゃん、おにぎり作ってるの?」
七夏「はい♪ おむすびです☆ 柚樹さん、お腹空きました?」
時崎「いや、それは、まだ大丈夫だけど・・・」
七夏「もう少し、待っててくださいね☆」
時崎「ああ。ありがとう」
俺は、七夏ちゃんが、手際よくおにぎりを作っている様子に、少し興味を持った。
七夏「??? えっと、どうかしました???」
時崎「とても、手際がいいなと思って」
七夏「くすっ☆」
おにぎりを作っている七夏ちゃんは、とても楽しそうだ・・・それを見ていると俺も何か出来ないかなと、机の周りをぐるりと見回す・・・おにぎりの具は梅干、かつお、こんぶ、たらこ・・・と定番のものから、ジャコ? と・・・これは、なんだろう? その具を覗き込んでいると、
七夏「あ、えっと、それは、刻みうなぎさんです♪」
時崎「う、うなぎ!?」
七夏「土用ですので♪」
時崎「ん? 今日土曜日だったかな?」
七夏「そうじゃなくて、夏の土用(丑の日)です♪」
時崎「なるほど!」
うなぎのおにぎりは食べたことが無いので、今からちょっと楽しみなのだけど、いつも作ってもらってばっかりで、申し訳なくなってきた。俺にも何か出来る事はないかな・・・。
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「はい
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