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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン81 邪魔の化身とラスト・『D』(邪)
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政界、カードゲーム界の頂点にこの3兄弟で君臨する事が目標のエリートコンビで、2年前にはアカデミアの買収をかけて万丈目と兄弟対決をしたこともある。その時に顔を見ていたのだから、それは見覚えがあって当然だ。
 それにしてもわざわざ2人そろってアカデミアまでそれを言いにくるあたり、元々の兄弟仲は悪くないのだろう。買収事件のせいか何となく嫌味なエリートのイメージが先行していたけど、この万丈目の兄だけあって案外根は悪人でもないのかもしれない。現に万丈目も、突然の登場の驚きが覚めてからはどこか嬉しそうだ。

「すまない、わざわざこんなところまで来てもらって」
「なに、気にするな。それよりも、お前に渡したいものがあってな。俺たちはデュエルモンスターズについては素人同然だが、万丈目グループの財力を結集してお前にぴったりだと思われるカードを製造したんだ。もっと早くに渡してやるつもりだったんだが、思いのほか開発に時間がかかってしまってな。これならばそのデッキの形を崩さずに入れられるはずだ、ぜひ使ってくれ」
「兄さん……」
「じゃあな、準。俺たちはこの後も他の仕事があるからお前の雄姿を特等席で見ることはできないが、お前のことは応援しているぞ」
「……ああ、ありがとう」

 それだけ言うとやって来たときと同じように、嵐のように2人の万丈目兄は去っていった。万丈目の手元に残された3枚のカードを大切そうに撫で、1枚ずつ丁寧にデッキとエクストラデッキに入れていく。その作業が終わってから、改めて僕の方に向き直った。

「清明、お前がこうして俺のところに来た理由はわかっている。俺もこの数日ずっと観察していたが、最後のDカードはマイク本人が常に肌身離さず持っているらしい。まったく、用心深いことだ」

 そう吐き捨てる万丈目の表情には、兄の前では隠していた焦り、苛立ち、そういったものが色濃く表れていた。だが、それも無理はないだろう。イエローから聞いた話によれば、マイク本人が直接現場に出向いて指揮を執るのは今回がラストチャンス。これ以降彼は仕事を持ってきては裏方から指示を出すことに徹するそうだから、カメラの前で直接罪を叩きつけられるのは今日が最後なのだ。
 万丈目が深く息を吸い、僕の顔を真っ直ぐに見つめる。その目には、すでに硬い意志の力……誰が何と言おうとも聞こうとしないであろう、この男らしい負けん気の強さが宿っていた。

「よく聞いてくれ、清明。今日の試合で奴は俺とエドに途中まで本気で戦わせた後、適当なタイミングで八百長の指示を出すらしい。その時になったら合図を出すから、奴を取り押さえるのを手伝ってくれ」
「そりゃ構わないけどさ。万丈目、でもそれって……」

 今日の一戦は、全国放送の生中継だ。たとえ悪徳プロデューサーの持ってきた仕事でも、エドのネームバリュ
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