90栞も香里も美汐チャンも悪夢
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、へたり込んで「えぐえぐ」と泣いていた。
「その後は眠くなって… 何も覚えてないの、でも昨日の夕方、丘の上で目が覚めて」
例のエンディングから、夕方まで寝こけていたらしい。
「ずっと、これ探してたの」
枕元から、泥で茶色に染まって、ボロボロになったヴェールを出す。
「やっと見付けたのにっ、汚れてたから川で洗ったのに… 落ちないの、あんなに洗ったのにっ」
茶色のヴェールを抱いて泣き始める真琴。 見付けた後は、日が暮れるまで洗っていたのかもしれない。
「大丈夫よ、ちゃんと洗剤を使って、痛まないように手洗いしたら綺麗になるわ、貸してみなさい、洗ってあげるから」
頭を撫でながら「よしよし」して真琴をなだめる秋子。 その間自分の娘は、ほったらかしであった。
「本当っ? きれいになる?」
「ええ、新品みたいにはならないけど、白くしてあげるわ」
「うんっ」
相手が秋子ちゃんだけに、きっと裂け目も直して、真っ白にしてしまうのだろう、と思うのは祐一だけでは無かった。
「真琴、この服、お洗濯したのいつ?」
ベッドの傍に脱ぎ散らかした、泥だらけの服を拾い集め、洗濯籠に入れて行く。
「…わかんない」
「そう、じゃあ洗うから着替え出してあげるわね」
「うん」
秋子にだけは素直で、恥ずかしそうにしている真琴。
「それよりどうやって入ったの? 玄関には鍵を掛けておいたはずだけど?」
秋子にとっては、今の修羅場や名雪より、防犯上の盲点が気になったらしい。
「えっと、入れなかったから壁を登って、そこから」
そう言いながら、ベランダを指差す真琴。
「お前は泥棒かっ」
ボカッ!
「なにすんのよっ、痛いわねっ」
食い逃げ、ヤク中、学校の辻斬り、居眠り娘、病気の妹を無視する女、万年タートルネック、けろぴー、祐一の周囲には、ろくな奴がいなかった。
「もうっ「きんきゅうじたい」だったんだから、しょうがないでしょっ」
「泥棒猫…(ボソッ)」
名雪にとっては正に泥棒と猫のセットだったが、相手は狐なので「ねこさ〜ん」などと、和んでいられる状況でも無かった。
「でも、あの壁を登りきったなんて、真琴って凄いのね」
いつものポーズで、にこにこ笑っている秋子。
(あの壁って、どんな壁なんだ?)
きっとSASUKEも真っ青な仕掛けが満載に違いない。 そんなささやかな疑問を抱く祐一だったが、自分で実験したり、門限に遅れても壁だけは登るまいと心に決めた。
(今度真琴に登らせてみよう)
「それで、ゆうべ祐一さんとは愛し合ったの?」
雑談と一緒に、確信を突いた話題まで、顔色一つ変えずに聞ける秋子。
「えっと、「昨日は」してないよ?」
その時、名雪と祐一の辺りだけ「サーーー」っと血の気が引く音が聞こえていた。
「そう、で
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