ああっ、おキヌちゃん様2
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たら、もう少し続けてもいいのね〜」
「「はいっ」」
石神に抱き起こされ、そのまま寝所へ連れて行かれたおキヌ様。 その心は遠く、もう一つの氷室神社まで飛んでいた。
(死津喪比女……)
翌日、おキヌ様は、ある気配を感じて目を覚ました。
「おはようございます、姉さん、もう体は大丈夫ですか?」
「ええ、昨日はどうなったんですか?」
「2時間も笛を吹いて、そのまま倒れてしまったんです。 ヒャクメ様からも、体が慣れるまでは無理をしないようにと」
「はい、分かりました… ちょっと外へ」
「姉さんっ、どこへ?」
おキヌ様と、追いかけて来る石神は、神社の敷地の一角へと急いだ。
「おはよう、もう来てくれたんですね」
おキヌ様は、建設中の神社の傍に、新芽が生えているのを見付けた。
「こりゃあ、何の芽ですか?」
「これは、死津喪比女さんです」
「ええっ!?」
関東一円に地震と花粉の被害を起こし、自分の管理していた辺りにも根を張っていた、恐ろしい妖怪の名を聞き、摘み取ろうとする石神。
「あっ、だめですっ、摘まないで下さいっ」
「でも…」
まるで飛び梅のように、以前の氷室神社から、新しい氷室神社に飛んで来た木の芽。 しかし、その芽からは、以前のような禍々しい気配は感じ取れなかった。
「どうされ申した? ここは工事現場の近く、ささ、仮の社にお戻り下さい」
「あの、恐山さん、この子の周りに柵を作ってあげたいんですけど。 工事の方に、少し材料を分けてもらって頂けませんか?」
「分かり申した」
やがて死津喪比女の新芽の周囲には、恐山と石神が持って来た鉄骨の柵が作られ、例えクレーンが倒れて来ても大丈夫な、頑丈な物が出来上がった。
「(な… 何もここまでしなくても…)ありがとうございました… これでこの子も安心です」
「はっ、これしきの事、いつでもお申し付け下さい」
文字通り、この程度の仕事は朝飯前の恐山。
「あんたタフだね…」
石神の方は、ちょっと苦しかったらしい。
「でも、死津喪比女さんの名前って、全部忌み名なんですね、ちょっと変えてみましょうか」
そして新芽の柵の前にはこう書かれた、「工事中折らないで下さい 静母姫の木」
やがて数日が経つと、その心配は無くなった。 笛の音を聞く度に成長し、柵を壊すほど大きくなった静母姫は、また根を伸ばして行った。
そして以前、自分が張っていた枯れた根と合流すると、再び関東一円に根を伸ばし、笛の音に操られるように、地盤を縫い付け、地下水を吸い、液状化を防いで行った。
やがて富士の山に届いた頃には、火山性ガスさえ徐々に抜き取り、おキヌ様がいる限り、大きな地震や噴火さえ収まったと言われる。
「こんなに早く大きくなって、さすが静母姫さんですね」
「しかし、花粉症に
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