86佐祐理の悪夢
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屋敷に入って中を案内され、客間まで行く途中、佐祐理の母に出会った。
「あ、お母様、紹介します。 佐祐理の新しいお友達で、舞の弟さんの祐一さんです」
「始めまして」
軽く頭を下げ、普通の挨拶をした祐一だが、母の視線は祐一の足の周り、別の一点に集中していた」
「かっ、一弥っ!」
祐一の背後にいた霊を見て、驚きの声を上げる母。 それはこの日のために、天使の人形が憑依させた一弥本人だった。
「…この子が一弥? 佐祐理の弟… 悪い霊じゃなかったから追い払わなかったけど」
「え?」
その姿が見える舞と母、見えない祐一と佐祐理。
「どうして貴方が一弥を? まさか、貴方が相沢様……」
「は…? ええ、相沢祐一です」
最近起こった出来事から、自分達に「様」を付ける相手を見て、倉田家も妖狐の一族なのを思い出した。
「…ここがこの子の家、さあ、祐一から離れてお帰り」
舞の言葉を聞かず、祐一から離れようとしない一弥。 そこで佐祐理の耳にだけ、あの声が聞こえた。
(さあ、一弥は目の前だよ、どうやって取り戻すかは知ってるよね、もう高校生なんだから)
その言葉で、以前、名雪に封印された一連の記憶と感情を取り戻す。 喜怒哀楽の全てを取り戻した時、その胸に激痛が走った。
「ゆ…… 祐一さんが一弥と一緒にいてくれたんですね… 約束通り、佐祐理の所に返しに来て下さったんですね…」
いつも笑う事しかできなかった佐祐理に、悲しみと涙が戻り、ふらふらと祐一に歩み寄り、抱き付こうとするが舞に止められる。
『…だめ』
佐祐理の目的は一弥だったが、自分以外の女が抱き付くのを許さなかった舞は、それ以上近寄らせなかった。
「意地悪しないでっ、舞っ、一弥はどこにいるんです?」
「相沢様の足にしがみ付いているわ、ほら、ここに」
力を持つ母は止められず、祐一に近付けてしまったが、母は迷わず懐かしい自分の息子の頭を撫でた。
「こ、ここに… 昔みたいに顔は見えないのね、もっと暗い所に行きましょうか?」
自分の足元で二人の女性が屈み、懐かしそうにしているので動けない祐一。
ちょっと大きくなったままのジュニアや、我慢汁の匂いがしていないか、少し恥ずかしかった。
「…暗い所で何するつもりっ?」
最近、毎日自分がしているような事を、佐祐理にもされるのでは無いかと心配する舞。
「えっ…?」
その言葉を聞いて、昔、母が言った「縁が出来れば、一弥は貴方の子供として返してくれるかも知れません」と言う話も思い出す佐祐理。
(祐一さんが佐祐理の許婚… それで結婚して子供が出来れば一弥は。いいえ、結婚なんてしなくても…)
戻された記憶の中から、天使の人形に都合の良い部分だけが鮮明に蘇って来る。 佐祐理もまた、他の少女達のように、奇妙
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