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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
鼠の矜持、友の道
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ことがある。その時のわたしは最前線に気を向ける余裕などなく、ヘルプに入ったパーティーの人が噂していたのを聞いた程度でしかなかったが。

「ボスを倒した時、全員にかなりの額のコルが報酬として入るだろ? けど、それは普段フルレイド、四十八人で分けてるものだけど、マサキたちはたった二人で山分けしたんだ。相当の額だろうぜ。それに、確かあの時の報酬アイテムは一部を除いてオークションに掛けただろ? だから、その分を合計すれば……」
「いいえ、幾らなんでも5000万は不可能だわ。どんなに多く見積もったとしても、二人分合計して1500万コルがいいところよ」
「それは……そうだよな。うーん、それ以外に大金を稼ぐ方法なんて……」

 議論が停滞したキリト君とアスナが揃って答えを求めるようにアルゴさんに顔を向ける。アルゴさんはその間、邪魔するのを避けていたのか、わたしの前にあったジンジャーエールに手を伸ばして我が物顔で口をつけていた。いつの間に、と思ったけれど、一々糾弾しているような場合じゃない。

「マー坊はそれ以外にもう一つ、オイラと契約を結んでいタ。その内容は、『実際には500万コルの口止め料を、5000万コルとして伝える』コト」

 ――な。

「なぬぅ!?」

 今度はクラインさんが叫んだ。

「おいおい待てよ……ってことは、金額を十倍も吹っかけたのか? 大法螺吹きにも程があるだろ……」

 と、エギルさんも呆れ顔だ。

「馬鹿みたいな大法螺吹きでも、効果はあっタ。5000万コルのインパクトに、それを払っても得られる情報はただの前提条件。それに加えテ、マー坊はそっちの契約にも300万コルの口止め料を払っタ。それを買おうとする奴は、結局誰もいなかったナ」
「……あの、アルゴさん。どうしてアルゴさんは、そんな契約を引き受けたんですか?」

 今までの話を聞いて、わたしにはどうしてもそれが訊きたかった。《鼠》のアルゴと言えば、金さえ積めば自らのステータスさえ売ると言われている根っからの商売人だ。なのにそんな契約を呑んでいる。効率で言えば、二つ目の口止めを断って、本当の料金を伝えた上で両者に吊り上げさせた方が儲かりそうなのに。
 それに今思い返せば、マサキ君は自分に連絡する場合はアルゴさんを通せとも言っていた。いくら彼女がメッセンジャーも兼業しているとは言え、そこまでさせるのも、するのも聞いたことがない。
 アルゴさんは僅かの間硬直すると、ほんの僅か目線を落とした。

「……トー坊が死んだ直後のマー坊を見たら、そうするしかないと思っタ。トー坊が死んだのはオレっちの責任だからナ。今思うと……許されたかったのかも知れなイ」

 それまでの一人語りとは違う、ぽつりぽつりと一滴ずつ水滴を零すような声だったけれど、わたしははっきり
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