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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
鼠の矜持、友の道
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ストラスキルの存在が判明したのはその頃だったわね。まさか、ラフィン・コフィンが関係していただなんて……でも妙だわ。今思えば、そんな一大イベントを当時の攻略組が放っておくなんて。たちまち大騒ぎになってもおかしくないはずなのに……」
「その時、最前線は二十五層の攻略に忙しかった。勿論マー坊のところには情報屋、新聞屋が殺到したけド、もともとあの軽い身のこなしに加えて《風刀》で転移までできるようになったかラ、追い縋れる奴等は一割にも満たなかったナ。けど、中にはしつっこく追いかけるやつもいたし、攻略会議にでも顔を出そうものなら大手のギルドにちょっかい掛けられるのは目に見えてル。だからマー坊はそいつ等を追い払うために、『《風刀》スキルの情報開示に必要な条件』に口止め料を掛けたんダ」

 アルゴさんが万人から好かれているわけではない理由の一つに、《情報を売らない》ことでも商売を行うという彼女独特のビジネススタイルがある。この場合、マサキ君がアルゴさんに前払いした口止め料よりも高い料金を相手が支払うと言った場合、マサキ君に口止め料の値上げの是非を問う。それでマサキ君が値上げを断れば相手がその情報を得、値段を吊り上げればその吊り上げられた値段をボーダーラインとして再び相手がそれを買うかどうか判断する。つまり、両方が譲らない限りオークション式に値段が跳ね上がっていくということだ。

「『情報開示に必要な条件』ってことは、もしそれを知られたとしても実際に情報へ辿り着くためにはもう1クッション必要になるってことか……正々堂々とは言えないけど、ステータス、特にスキルの情報なんて命にも等しいわけだし、それを開示する条件をつけてあるってのは、言い逃れをするには十分なのかも知れないな」

 アルゴさんの言葉に時折頷きつつ話を追いかけるアスナとキリト君。アルゴさんはあくまで独り言を言っているという体で質問に答え、話を進める。

「そのせいで、オイラは相当駆けずり回ったけどナ。まあ。5000万コルなんて設定されたら文句の一つも言いたく――」
「5000万コル!?」

 叫んでからハッとして慌てて口を押さえるけれど、もう遅い。しかし周囲を見れば皆わたしと同じ感想のようで、唖然としたままで固まっていて避難の視線や声が飛んで来る気配はない。

「そんな……口止め料って、先払いするものでしょう? 5000万コルなんて大金、今の大手ギルドだって払えっこない金額よ。それを個人でなんて……有り得ないわ」
「……いや、有りうるかもしれない」

 今度はアスナが全員の思考を代弁したのを、キリト君が顎に手を這わせながら否定した。

「知ってる人もいるだろうけど、マサキとトウマは、二十二層のボスを二人だけで攻略してるんだ」
「あっ……」

 その話ならわたしも聞きかじった
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