アインクラッド 後編
鼠の矜持、友の道
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顔を間違えるはずも無い。
「アルゴ、さん。どうしてここに……?」
「エミの言うとおりだぜ。なんだってんだよ、こんな時間に。店は開いてねーぞ」
「それはこっちの台詞だヨ。こんな時間に肥溜めみたいなところに大勢で集まって。犯罪の打ち合わせと疑われても文句は言えないだろうナー。あ、オイラにもジンジャーエールちょーだいネ!」
「お前な……」
時分の店を肥溜め呼ばわりされたエギルさんがチョコレート色のこめかみをピクピクと引きつらせる。その怒りはもっともだと思うけれど、今はもっと大事な話がある。わたしは意を決してアルゴさんの隣に立った。
「アルゴさん。マサキ君と連絡が取りたいんです。お願いできませんか?」
「まーまー、そんなに怖い顔しないで、落ち着こうヨ。今回の一件、あんまり上手くいかなかったんだロ?」
「それは……はい」
隠しても仕方が無いことだ。それに、アルゴさんは元々このことを知っていた人間で、マサキ君の呼び出しと、交渉場所の選定をお願いした。アルバイトシステムを悪用して話を盗聴したのもアルゴさんのアドバイスによるものだ。
わたしは正直に、マサキ君が濡れ衣を着せられることは防げたことと、その後マサキ君が「二度と関わるな」と言ってどこかへ消えてしまったことを話した。
「ンー……」
「お願いします。もう一度、マサキ君と話がしたいんです!」
「それじゃ、500コル……って言いたいんだけど、ムリ。ゴメンネ」
「そんな、どうして!?」
「いやー……それが、ついさっきマー坊からフレンド切られちゃったんだヨ。多分、オレっちがエーちゃんたちとグルだったって気付かれたんだろうナ!」
「そんな……じゃあ、マサキ君の場所も……」
「うん、分からなイ」
微かに見えた光の筋が掻き消されて、わたしの目の前は再び真っ暗になってしまった。身体から力が抜けてへたり込みそうになるのを、アスナとシリカちゃんが支えてくれて何とか踏みとどまる。
「だから、もう、終わりにしたらいいんじゃないかナ」
アルゴさんの声が、頭上から浴びせるように聞こえてきた。感情をスポイトで抜き取ったみたいな平坦な声。顔を見上げると、ジンジャーエールのストローに口をつけ、沈んでいく茶色の水面に目を向けて放たれた言葉であることが分かった。
「もし今後エーちゃんがマー坊と会えたとして、何を言っても無駄サ。何も知らない奴が何を言っても、うざったいと思われるのがオチだネ」
「……アルゴさんは、知ってるんですか? トウマさんのこと……マサキ君のことを」
「100コル」
「手前ぇ、こんな時にまで商売かよ!?」
「いいです、クラインさん。払います」
100コル硬貨を一枚テーブルの上に置く。アルゴさんはこちらを見ずにそれを受け取った。
「
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