アインクラッド 後編
鼠の矜持、友の道
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うに眉をひそめ赤い髪をボサボサとかき回す。
「あー……エミちゃん。悪いけど、俺たちもあんま詳しいことは知らねえんだ。マサキにゃ昔コンビ組んでた奴がいて、そいつがそのトウマなんだけど……」
言いにくそうに口をつぐんでしまうクラインさん。その後に続く言葉を、キリト君が付け足してくれた。
「……殺されたんだ。笑う棺桶の連中に」
その瞬間、わたしの体を雷に打たれたみたいな衝撃が末端に至るまでを迸り、心臓が爆発しそうなほどに大きく跳ねた。笑う棺桶――それは、SAOに存在する、最も有名で、そして最も凶悪な殺人ギルドだ。いわゆる犯罪者ギルドと違うのは、オレンジギルドが金銭やレアアイテムなどの奪取を目的としてプレイヤーに攻撃を加えるのに対し、レッドギルドは最初から殺人を目的にプレイヤーを襲う。手持ちのコルや武器、アイテムを全て差し出して懇願したとしても、襲われたプレイヤーが解放されることはない。故にその他の犯罪者とは区別され、SAO内で犯罪者を指すオレンジよりも更に色の濃いレッドの名を冠するのだ。
「……そんな……ことが……」
トウマという人物をわたしが知らなかった時点で、何らかの原因でその人が亡くなっているという可能性には思い至っていた。しかし、告げられたのはこの世界において最も残忍でおぞましい死因。わたしは知り合いをプレイヤーに殺された人物と会ったことが何回かあるけれど、彼らは皆共通して、とても深い傷を心に抱えていた。もしマサキ君にもそれと同じ棘が突き刺さっているのだとすれば、彼が他人との接触を頑なに拒むことにも説明がつく。
「……探さなきゃ。マサキ君を」
もう一度会って、話したい。少しでもマサキ君の力になりたい。もしかしたら、それはマサキ君にとって物凄く不快なことなのかもしれないけれど……それでも、ここで立ち止まりたくなかった。
「探すって、どうやって?」
「アルゴさんなら、マサキ君と連絡が取れるはずだから」
メッセージウィンドウを呼び出し、アルゴさんへのメール画面を開く。マサキ君への連絡はアルゴさんを通せということは、逆に言えばアルゴさんはマサキ君に対していつでも連絡を取れる立ち位置にいるということだ。
「もしマサキ君に拒絶されたら、その時はアルゴさんにマサキ君の居場所を聞いて、直接乗り込むわ」
「――おや、オネーサンをお呼びかイ?」
「……え?」
文面をタイピングしながら対マサキ君用のシミュレーションを重ねていたところで、聞き覚えのある鼻にかかった特徴的なボイスが耳を打った。半ば反射的に目を向けると、店のドア枠に寄りかかった小柄な女性が、顔の三本線を軽々しい笑顔に歪めていた。その特徴的な声と
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