暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
第5章:幽世と魔導師
第129話「守護者討伐と……」
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 先に落ちてきたのは残りの上半身と、その胸にシャルを突き刺すように落ちてきた優輝だったからだ。

「……くふっ……」

「……まだ、生きてるのか」

 血を口や分かたれた部分の腹から垂らしながらも、“狂気”はまだ生きていた。
 厳密には違うとはいえ、“狂気”もまた緋雪と同じ。
 頭と心臓を潰さない限り生き永らえる吸血鬼には変わりなかった。

「皆にこんな残酷な状態を見せるのも悪い。……消えろ」

「……お疲れ様、お兄ちゃん……」

「…………」

 グローブ形態にしていたリヒトを剣に変え、振り上げる。
 労わるように“狂気”が口を開くが、優輝はそれを無視する。
 そして、振り下ろす瞬間……。

「……できれば、妖として会いたくなかったな」

「っ……!?」

 そういって、“狂気”の妖は首を断たれ、息絶えた。







「……終わりね」

「封印……っと」

 そしてその同時刻。リヒトから合図を受け取った事により、椿達が門を封印した。

「戻りましょ。まだ妖は残っているかもしれないし」

「守護者は倒したとしても、残滓があるだろうからね」

 そういって椿と葵は地面を蹴り、大きく跳躍。
 相当なスピードで学校へと戻っていった。







「……なんだよ」

 黒い靄のようになって消えていく“狂気”の妖を見ながら、優輝はそう呟く。

「なんで、最後にそんな事を……」

 全くもってやるせない。そんな気分が優輝を襲った。
 “狂気”の妖が遺したその言葉は、明らかに“緋雪として”の言葉だった。

「……ちっ…!」

〈マスター……〉

「……大丈夫だ。折れる訳じゃない」

 心が折れたり、挫ける訳ではない。
 しかし、確かに優輝の胸中は複雑なものになっていた。

「優輝君!」

「司……」

「……お疲れ様」

「……ああ」

 優輝の、身体的ではなく精神的に疲れた表情を見て、司は簡潔な言葉で労わる。
 優輝にとってその方がありがたいものだった。

「……ったく…なんでよりにもよって緋雪を守護者に選ぶんだ……」

「守護者って、そういうものなの?」

「椿たちの言う限りじゃ、大抵その地にある妖怪の逸話とかから守護者が決まるらしい。……まぁ、海鳴市にはそんな逸話がなかった。だから消去法で吸血鬼の化け物になりかけた緋雪を“門”が選んだ…って所か」

 確かな苛立ちを滲ませる優輝に、司はどう声を掛ければいいのかわからなかった。
 すると、そこへ一つの影が降りてくる。

「戦闘が終わったから行くように言われたけど……これは一体…」

「アリサか……裏門の方はどうなんだ?」


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