第16話 消えゆく背中
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――リュウジが、ロケットランチャーを抱えてテントから出て来た。
息を切らせて駆けつけて来たコリーンからそう聞いたフィリダは、炊き出しの場から脱兎の如く飛び出し、難民キャンプから一瞬で消えてしまう。
その場に取り残されてしまったコリーンは、やむなく彼女に代わって炊き出しを始め――親友の暴走を心配しつつ、ため息をつくのだった。
◇
「てめぇ、ふざけんなよッ! どこまで俺らをお荷物扱いすりゃあ気が済むんだ! あぁッ!?」
難民キャンプから少し離れた、廃墟に陰で。アーマンドの聞き慣れた怒号が響いてくる。
その叫びを辿り、向かった先では――リュウジに掴みかかる彼の姿が伺えた。
「ちょっと! アーマンド、手を離してッ!」
「うっせぇ! てめぇもマクミランから聞いてんだろ! ――おい、なんとか言えよ! そんなに俺達が使い物にならねぇのか!? 囮にすらならねぇのかよ!」
フィリダは慌てて、リュウジからアーマンドを引き離そうとする。その手を振り払いながら、若きエアレイドは懸命に食い下がった。
「……囮になど、決して使えません。あなた達1人1人は今、イギリス支部に残された最後の希望なのです」
「希望だぁ……!?」
「……!」
だが、体格で勝るアーマンドに胸元を掴まれながらも、リュウジは眉ひとつ動かさず――普段通りの穏やかな口調で、そう諭す。
「今、世界各国の支部がそれぞれの復興に追われ、手が離せない状況が続いています。この先、人類が再び文明を取り戻すためには――若く前途ある力こそ、何よりも残さねばなりません」
「だからってよぉ……! 俺達、EDFだろう!? なんでてめぇだけなんだ!」
「若くないからです。死ぬのは老いた順と、相場が決まっていますから」
「24の分際で年寄りぶってんじゃねーよ!」
「あなた達ほど若くはない。出向く理由はそれだけでも十分です」
「そんなっ……! どうして、あなた1人でなんて……!」
「これを扱えるのが、私だけだからです」
しかし、アーマンドもフィリダも納得できずにいる。そんな彼らを前に、リュウジはボルケーノ-6Wを差し出した。
重量感に溢れる火力の悪魔を前に、2人の若者は息を飲む。
「これ、は……」
「ボルケーノ-6W。『伝説の男』が使用していた、曰く付きのロケットランチャーです」
「でっ……『伝説の男』!? そんなもんが送られて来たのか……!」
「じゃあ……これを渡すから1人で倒して来い、っていうことなの……!? そんなの、いくらリュウジでも無理よ! 『伝説の男』じゃないのよ!」
「なら、今から成り切りましょう。そうするより、他ありません」
――「伝説の男」がいないなら。今こそ自分が、その存在に成り替わる。
そう言い放つ
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