第14話 今ある幸せ
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それから、更に数日が過ぎ――雪が降り積もるロンドンの街には、再び平穏が訪れていた。
「あんたが去年寄越したこのマフラー、調べてみたら超安物だったじゃん! こんな安物でクリスマスプレゼントが成り立つとでも思ってんの!? あんたの給料からプレゼント代天引きしてやろうかしら!」
「オメーにはその程度の安物で十分だっつーの! だいたいそんなに気に食わねーなら今年もちゃっかり巻いてんじゃねーよ! ネタが尽きるだろうが!」
「なによ!」
「なんなんだよ!」
久々の休みを得たリュウジとフィリダは、口喧嘩を繰り返すアーマンドとコリーンの喧騒を背に、クリスマスムードで盛り上がる夜の大通りを歩んでいる。
「もう、あの2人ったら毎度毎度……」
「ふふふ。大変仲睦まじいようで、何よりですよ」
「あれで仲良いって言うの……?」
「ケンカするほど仲が良い、という言葉もありますから」
「……私は、リュウジとケンカなんてしたくないよ……」
「何か仰いましたか?」
「う、ううん。なんでもない」
頬を赤らめ、言葉を濁すフィリダを一瞥した後、リュウジは視線をプレゼント売り場へ移す。そんな彼の背を、フィリダは愛おしげに見つめていた。
「……」
――遡ること、数日。
決闘を制したフィリダの意向を汲み、此度の視察でリュウジを極東支部に送還する話は流されることになった。
結局、一文字親子はロンドンでの復興体制の情報を持ち帰るのみに留まり、この地を去ることになるのであった。
「……今回のところは、私の負けよ。それは認めるわ」
「カリンさん……」
「――だけど! 手を引くのは今回だけよ。次の第2ラウンドじゃ、絶対に負けないんだから!」
「……わかったわ。あなたが諦めない限り、私も絶対に負けない。リュウジのためなら私だって、どんなことでも出来るんだから。……それで、次はどんな勝負かしら?」
だが、かりんとフィリダの戦いは、まだ終わってはいない。姫君の脳裏には、愛しい男の義妹が残した爆弾発言が焼き付いていた。
「決まってるじゃない。ペイルウイングとしての勝負の次は、オンナとしての勝負よ。――勝敗の付け方は、義兄さんの子を先に身籠った方の勝ち!」
「……ん、んな、なあぁっ……!?」
「あら。何をそんなに驚くことがあるのよ。あなたも欲しいんでしょ? 義兄さんの、熱い子種……」
「こ、こだ、ね、ねね……」
「次の視察まで、義兄さんは勝者の権利としてあなたに預けてあげる。それまでに、義兄さんの子を孕んでみなさい。もし出来なかったら――今度こそ、私が義兄さんを奪い返すから」
バゼラートに乗り込み、去りゆく寸前。フィリダにだけ聞こえるように囁かれた、かりんの言葉。その1つ1つが、姫君の心にずしりとのしかかって
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