第13話 スカイハイ・キャットファイト
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」
「バカにしないで……! これでも、彼を想う気持ちだけは――誰にも負けないつもりよ!」
「減らず口をッ!」
いよいよビッグベンの荘厳な時計塔が、目と鼻の先にまで迫ってきた。視界を埋め尽くす、その巨大な影を見上げ――かりんは、強く地面を蹴り上げて急上昇する。
「――はぁあぁあッ!」
そんな彼女を追うように、同じ地点からジャンプしたフィリダは――弾丸の如き速さでかりんに肉迫していく。その怒涛の追い上げに、圧勝を予定していたかりんが目を剥いた。
「なっ……!」
「お嬢様だと思って、甘く見ないで。これでも入隊前まで、脚はバレエで鍛えてたんだから!」
「――このおぉおぉおッ!」
かりんを遥かに上回る脚力から放つジャンプは、バーニアの上昇力も加えて彼女の体を高く舞い上げている。自分と肩を並べる「白金の姫君」の姿に、かりんは唇を噛み締め――さらにバーニアを加速させた。
その背を追随するように、フィリダのスピードもさらに高まって行く。天へ向かう2つの流星が、ビッグベンをなぞるような軌跡を描いていた。
「接戦してるな……こりゃあ、どうなるかわからないぜ」
「かりん……!」
その艶やかなラインを描き続ける流星を見上げ、アーマンドと昭直は手に汗を握る。一方、リュウジは――フィリダに接近されてからの、かりんの過剰な加速を静かに見つめていた。
彼女の真後ろに回る、フィリダの挙動も。
(……あれでは、エネルギーがすぐに尽きてしまう。あの高度で緊急チャージ状態になるようなことがあれば……)
だが、その懸念がありながら、リュウジの表情には切迫の色がない。彼の瞳は義妹を見据える、白金の姫君を映していた。
(なんで、なんでよ……! 私は勝たなくちゃいけないのに……!)
一方。追い上げてくる仇敵の加速を目の当たりにして、かりんの表情には徐々に焦りの色が滲むようになっていた。
近いようで遥かに遠い、ビッグベンの上端を見上げる、彼女の黒い瞳の奥には――在りし日の平和な家族が映されていた。
仲睦まじい姉夫婦と笑い合い、生まれてくる新しい命に思いを馳せた――穏やかな毎日。それを一瞬にして奪った、あの巨獣。
そして――密かに想いを寄せていた義兄の、失踪。
希望と絶望に挟まれた日々が、少女の目の前を埋め尽くし――その目尻に、微かな雫が現れた。
(私がのろまだったばかりに、屑な隊員がいたばっかりに、姉さんは命も子供も失って――義兄さんは全てを失った! だから弱卒を淘汰して、義兄さんのような優れた兵士だけのEDFを作って……同じ事を繰り返させない未来を作らなくちゃいけないのッ!)
リュウジを教育大隊長のポストに据える。その判断に込められた思いを胸に――かりんは、バーニアをさらに
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