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うぬぼれ竜士 ~地球防衛軍英雄譚~
第12話 オンナとオンナの前哨戦
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を損ねてしまいますから」
「やれやれ……女の苦労が絶えねぇなぁ、お前」

 ため息をつき、2人の戦姫を見遣るアーマンドはそこで一度言葉を切ると――彼女達を穏やかに見つめるリュウジの横顔に視線を移す。

「しかしよ。お前が結婚してたと聞いた時は意外だったぜ。周りの女どもがキャーキャー言ってても眉一つ動かさなかったお前が、よろしくヤッてたなんてな」
「はは……彼女は――かのんさんは、他の方とは違うところがありましたから」
「へぇ、どんな?」

 戦友の問いに、リュウジは天を仰いで過去を思い返す。

 あの戦禍の中で、自分に向けられた眼差し。他の誰からも貰えなかった、その視線を――

『安心してくれ。君達は、オレが必ず守る。例え、命に代えても――!』
『――だめ! そんなこと、言わないで! あなたも生きて! 自分を、見捨てないでっ!』
『……!』

 ――言葉を。

「……」
「アスカ?」

 暫しの、沈黙。それを破るべく、アーマンドを見遣る彼は、華やかな笑みを浮かべていた。

「……私を称えてくださる女性の方は、確かに大勢いました。自分なら出来ると、背中を押してくれる人も」
「そりゃ、そんだけ顔がよけりゃな。それに『伝説の男』にゃ及ばないってだけで、俺達からすればお前も大概モンスターだからな。お前に縋りたがる女は多いだろうさ」
「けれど……『自分を見捨てないで』と願われたのは、彼女と関わった時が初めてでした」
「……へぇ」

 フィリダとかりんを見ているようで、見ていない。ここではない、遠い何処かを見つめる眼差しで、リュウジはビッグベンが映る空を見上げていた。

(――かのん。君を失った今なら、わかる。強さが欲しいと口で言いながらも――オレはずっと、探し続けていたんだろう。強くないオレでも受け入れてくれる、温かい場所を)

 一文字竜士に戻るなら、自分は実力以上の強さを求められるようになる。自分が逆立ちしても敵わなかった「伝説の男」の、代わりを果たすために。

(たぶん……ここが、そうだったんだ)

 そんな生き方を、かのんは望んだだろうか。自分に「自分を見捨てないで」と願った彼女が。リュウジに必要以上の強さを求めなかった彼女が。そんなことを望むのだろうか。

(兵士としての強さなんて要らない。EDFも民間人もない。みんなが共に手を取り合って、大切なものを取り返すために生きる。そんな風に暮らしていけるこの街に、オレは今――君に似た安らぎを感じてるんだ)

 そう逡巡するリュウジの視線が、かりんの手の内にあるロケットペンダントに向かう。その中に仕込まれているであろう、妻の写真へ。

(……君と、離れるのは嫌だけど。けど、君にも、オレ達の子供にも――できれば、故郷の日本で。この先も
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