第9話 泥棒猫
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「イギリス支部ロンドン基地所属、ペイルウイング隊隊長バーナデット・ローランズです」
「同じく、ペイルウイング隊副隊長フィリダ・エイリングです!」
バゼラートから降り立った2人の男女に向け、出迎えた2人のペイルウイングが敬礼を送る。戦時中から訓練生を指導していたバーナデット・ローランズと、第二次インベーダー大戦を生き抜いたフィリダ・エイリングの2名だ。
亜麻色の長髪をポニーテールに纏めた、20代後半の美女は、真剣な面持ちで初老の男性――極東支部副司令、一文字昭直と向かい合う。
昭直の黒い瞳は、彼女とその隣で敬礼を送る――桃色が掛かった金髪のセミロングを靡かせる、色白の美少女を交互に見遣っていた。
「……ご苦労。極東支部より参った、副司令の一文字昭直だ。出迎え、感謝する。ロンドンの英雄『白金の姫君』とお会いできて光栄だ」
「恐れ入ります!」
戦後、その勇戦を称えられ「白金の姫君」の異名を与えられたフィリダは、極東支部にまで己の名が知られていたことに緊張を覚える。副司令という大人物にまで評価されるという大変な栄誉を賜わり、彼女の頬は僅かに紅潮していた。
「……」
そんな彼女を、切れ目の美少女がじっと見つめている。その視線に気づいたフィリダは、副司令の隣に控えている彼女に目を向けた。
そして――同じ女でありながら、思わず見惚れてしまうほどの絶対的な彼女の美貌に。無意識のうちに、息を飲む。
「紹介が遅れたな。私の娘で、今回の視察での護衛に就いている――」
「――一文字かりん、であります」
かりんと名乗るペイルウイングは、冷たい声色で短く自己紹介を済ませると、バーナデットとフィリダに敬礼を送る。冷徹ささえ感じるその顔立ちと色白の肌に、フィリダの表情は僅かに強張る。
「緊張しているのであろう、大目に見てやってくれ。何せ、ペイルウイング訓練生課程を修了して、10日ばかりしか経っていないものでな」
「そうなのですか?」
「ああ。だが、父親の私が言うのも難だが――訓練生課程を僅か1ヶ月で終わらせた才女だ。経験は浅かろうが、上官として信頼はしている」
「1ヶ月……!?」
バーナデットの問いに対する昭直の答えに、フィリダは驚愕する。天才と謳われた自分でさえ、ペイルウイング訓練生課程の修了には、約半年の月日を要した。戦時中、訓練課程を中断していた期間を除いてもだ。
それを、たった1ヶ月。それだけでも、彼女の才覚が如何に常人離れしているかが窺い知れる。
「……齢16の若輩者ですが、よろしくお願いします。私も、『白金の姫君』にお会いできて光栄です」
「え、ええ。こちらこそ、よろしく」
冷たい表情のまま、手を差し出す
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