第7話 君が笑ってくれるなら
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それから、5日が過ぎた。
終戦を迎えたということで復興作業はますます勢いを増し、ロンドンでは戦時中以上に、人や物が忙しく行き交うようになっていた。
――そんな中。
「いい店ですね、ここ。オープンしたばかりなのに、メニューも充実していて。でも意外でしたよ、こういう店にはあまり来られない方とばかり思っていましたから」
「じ、実際、あまりこういうところには来たことなかったんだけど……。親友の実家が開いたお店だし――高級レストランとかだと却って引かれるって言われて……」
「ふふ、ではその方にもお礼を申し上げなくてはなりませんね。このような店にお招きして下さったのですから」
ロンドンで話題になっていた、最近新しくオープンされたカフェ。「カフェ・マクミラン」と呼ばれる、その憩いの場に――2人の男女が、円形のテーブルを挟んで向かい合っていた。
男の名はリュウジ・アスカ。女の名はフィリダ・エイリング。EDFの隊員である2人は初めて、私服で顔を合わせていた。
英国淑女の気品を漂わせる、純白のドレスに身を包むフィリダに対し、リュウジは赤いカーゴパンツに黒のライダースジャケットというラフな格好。
まるで釣り合いの取れていない組み合わせだが――この場にそぐわないのは、どちらかといえばフィリダの方だろう。ここは、一般市民が主に利用する店なのだから。
(あれから5日間、復興作業で会ってもまともに顔も合わせられなかった……。ダメよ、このままじゃ。今日を転機に、きちんと彼と向き合わなきゃ! それが英国淑女として、私が果たさねばならない――)
「エイリング隊員? お顔が赤いですよ」
「ひゃいっ!? あ、い、いやあの、その……この前はその……あ、ありがとう。何度も助けてくれて。その上、情けないところも見せてしまって……」
「――別に構いませんよ。あなたがご無事なら、それでいいんです」
意中の男性を前に、しどろもどろになるフィリダ。そんな彼女の胸中を知ってか知らずか、リュウジは穏やかな面持ちのまま、優しげに彼女を諭していた。
――周りの客のほとんどが、そんな彼らに注目している。リュウジの甘いマスクに惹かれている女性客もいるにはいるが――圧倒的に、フィリダの美貌に見惚れている男性客の方が多い。
それゆえか、リュウジが浴びる視線の多くは、ロンドンの英雄でもある絶世の美少女と同席していることへの嫉妬であった。そのドス黒い憎しみの眼差しに、リュウジ自身は苦笑いを浮かべている。
「そ、それでね。その……これから一緒に戦って行く仲間として、親睦を深める……ということで。今日、このカフェに来てもらったのだけど、その……」
「……?」
「もしよかったら……名前で、呼ばせて欲しいの。いつか、頼れる人と出会えたら、そんな風に…
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