第6話 うぬぼれも才能
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のインベーダーが消滅した時。ロンドン基地から、作戦終了の通達が来た。
――そして。
『なんですって……そんな……!』
『どうした!?』
『極東支部から、連絡がありました……! 皇帝都市が、陥落したと……!』
『本当か!?』
『はい……! 終わったんです、戦争が……!』
通信の向こう側では。イギリス支部に響き渡る歓声が轟いていた。――ようやく、掴み取ったのだ。
数多の命を贄にして。人々の、平和を。
それをはっきり聞き取っていたリュウジは――故郷の方角を見やる。その遙か向こうでは――皇帝の最期を告げる輝きが、天を衝いていた。
「あ、あ……! わ、わた、し……っ!」
「……」
その通信で、我に返ったのか。フィリダはリュウジの胸の中で、自分の行動にようやく気がつき――耐え難い罪悪感に打ちのめされたように、涙を目元に滲ませる。
同期を危険に晒すことになったことへの償いのためにも、皆を守らなければならなかったはずの自分が。その同期に守られたばかりか、同期の責めから庇うこともできなかった隊員までも追い込んでしまった。
(ああ……なんて、ことなの……ッ! 私は、なんてッ……!)
エリートとして。あるいは、諸悪の根源として。誰よりも強く、誰よりも優秀でなければならない自分が、一番足手まといになっていた。
その重圧に、彼女の心が――押しつぶされてようとしている。
――それに、気づいたからか。
「ぁ……」
リュウジの掌が、優しく労わるように。フィリダの白い頬を撫でた。緊張を解きほぐすその温もりに触れ、少女の唇から甘い息が漏れる。
「……いいんですよ。あなたは、それでいいんです。そうやって、誰かを思いやれるなら。もう、次は大丈夫」
次いで、諭すような口調で、リュウジはフィリダの耳元に囁く。まるで、口説き落とすかのように。
そんな彼の腕の中で、少女は言われるがままに心を委ねそうになる――が。自分の行為が生んだ結果を思い出し、踏みとどまる。
「で、も……次、なんて……」
自分が、一番強くなくてはならない。気丈でいなければならない。その強迫観念が、彼女を突き動かし――リュウジの優しさを突き放そうとする。
だが。リュウジの力は女性の腕力で脱出できるようなものではなかった。華奢に見えて、強靭に引き締まっている彼の腕からは逃げられず、フィリダは悪あがきをするように身じろぎする。
ここで甘えてしまったら、自分は自分に負けてしまう。彼に全てを委ね、押し付けてしまう。自分だけが、楽になろうとしてしまう。
その意固地な良心が、彼女の理性を首の皮一枚で繋ぎとめていた。
――しかし。
「次なら、あります。その次を作るために――私が来たのです
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