第6話 うぬぼれも才能
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賭けるしかないか。短い間の中で、若きエアレイドはそう決断する。
「……お前ら、こいつが開いた穴から抜けろ! フィリダはさっさとチャージを済ませなッ!」
「お、おうっ!」
「……!」
アーマンドの呼びかけに反応し、彼の仲間達は矢継ぎ早に砲撃の焼け跡から包囲網を脱出していく。その後を追うように、巨大生物の群れは進路を変えた。
「反撃に転じます。エイリング隊員が戻るまでに、勢いを取り戻しましょう!」
「反撃!? 無茶言ってんじゃねぇ、あいつらはまだゾロゾロいやがるんだぞ! 大砲もへし折れて、フィリダも回復してねぇ今の状態で、どう戦おうってんだ! 普通、兎にも角にも戦域から離脱するところだろ今はッ!」
ハッチに入り込んだアーマンドは、まくし立てるようにリュウジを説得しようとする。だが、リュウジ自身は彼の言葉に耳を貸す気配を見せず、ギガンテスの側面に手を伸ばしていた。
「おい、聞いてんのか! これ以上深追いしたって無駄死にするだけ――ッ!?」
それを見たアーマンドは、さらに強く怒鳴ろうとしたが――リュウジの真剣な横顔に、思わず口を噤んでしまう。どこか凛々しさすら感じさせるその面持ちは、見る者を黙らせる気迫を湛えていた。
だが、彼が口を閉ざした理由はそれだけではない。リュウジがギガンテスの側面から取り出したモノに、目を奪われたからだ。
「……大丈夫です。心配することはありません」
「おまっ、それ……!」
それは、リュウジが車体に備え付けていた――ゴリアス-1。陸戦兵が携行できる火器の一つであり、強力な火力を持つロケットランチャーである。近くには、予備のAS-18も搭載されていた。
ゴリアス-1は相当な筋力と射撃精度が要求される武器であり、歴戦の兵士が殆ど戦死し、経験の浅い若手が中心となっている今のロンドン基地では使わない者の方が多い装備だ。
――そう。リュウジは、ギガンテスの砲身が機能しなくなる事態までも想定していたのだ。不慣れな緊急出動で、アーマンド達が基地で騒然となっていた中で。
(こいつ……俺達より遥かに、実戦慣れしてやがる!)
「私が砲台代わりになります。マルスレイ隊員は、このまま巨大生物の群れを追ってください。背後から奇襲をかけます」
「……あんたからすりゃ今更かも知れんがよ。当てられるのか? 走行中のギガンテスの上から、ああも激しく動いてる巨大生物共にゴリアスを当てようなんて、正気の沙汰じゃないぜ。下手すりゃ、撃つ前に振り落とされかねないってのに」
「お気遣いありがとうございます。私なら多少は慣れてますから、心配いりません。操縦の方、よろしくお願いしますね!」
その言葉を受けたリュウジは――出会った頃のような笑みを浮かべ、穏やかな表情のまま頷いてみせた。
不安
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