第3話 超人になろうとした人間
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左右に引っ張られているせいで、なんとも間抜けな面相に見える。
歴戦の古傷を思わせる右目の切創痕も、本人の顔がこれではいまいち威厳に欠けてしまう。それが、フィリダが感じたこの陸戦兵への印象であった。
「ひふへいひはひは。わらひは……」
「……アリッサ。離してあげなさい」
「はーい」
「んぷぅ。……えー、失礼しました。私は本日付でロンドン基地に配属になりました、リュウジ・アスカ隊員です。以前は、極東支部に勤務しておりました」
「極東支部……」
道理で見ない顔だ、とフィリダは納得したように頷く。同時に、極東支部の名が出たことに感嘆もしていた。
極東支部と言えば、前大戦でインベーダーのマザーシップを撃墜した「伝説の男」を輩出した支部だ。しかも、インベーダーの攻撃が沈静化しつつあるこのロンドンとは違い、今なお激戦が絶え間無く続いている東京の守りに当たっている支部でもある。
言うなれば、EDF屈指の猛者が集う、修羅の世界。そこから来たというのだから、聞き捨てならない。
一見とぼけているようにも見えるが――それが演技だとするなら。あの右目の傷にも、説得力が生まれてくる。見た目からして、自分達と同じくらいの若さだというのに。
(――でも。なぜ極東支部に居た経歴があるほどの隊員なのに、今になってイギリス支部に来たのだろう。日本では、今もインベーダーの猛攻が続いているというのに)
そんなフィリダの疑問を他所に、リュウジと名乗る陸戦兵は穏やかな笑みを浮かべ、子供達とのお喋りに興じていた。
――フィリダはふと、極東支部に纏わる噂話を思い出す。
あまりに過酷な戦況が続くあまり、精神を病んだ隊員が次々と、外国の支部へ逃げるように転属している、と。
彼がそれに当てはまるか否かは、定かではない。だが、仮にそうだとするなら。自分は、彼を許せるのだろうか。
我が身可愛さに故郷も仲間も見捨てた、EDF隊員を。
(……何を生意気なこと考えてるの、私は! そんな口が利けるほど実績を立ててるわけでもないのに! だいたい、彼がそんな人だと決まったわけでもないのに……!)
ふと過った考えを振り切るように、フィリダは頭を左右に振る。優しげな青年の横顔を見遣る度、彼女の良心はずきりと痛みを感じていた。
彼の柔らかい雰囲気があるからこそ、子供達は恐怖の象徴だったはずの陸戦兵に懐くことができているというのに。
「――そう。私はロンドン基地ペイルウイング隊所属、フィリダ・エイリング。……アスカ隊員。本日付ということは、ここのパトロールも今日が初めてなのでしょう? 初日から寄り道ばかりだと、正規ルートを見誤ってしまうわ。早々に、パトロールに復帰することを薦めます」
「あはは……確かに、そうですね。了解しました。ア
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