第2話 翼の姫君
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いたのである。
それゆえに彼女を同期として、EDF隊員として尊敬する者以上に、彼女を「自分達をより早く死地へ追いやった疫病神」と蔑む者は多いのだ。
フィリダ自身もその事実は把握しており、強く責任を感じていた。
だからこそ、せめて彼らが1日でも長く生き延びられるように、いち早く正規隊員に相応しい人物に導かなくてはならない。
それが彼女なりの償いでもあったのだが――それすらも、彼らには押し付けがましい持論としか思われていなかったのだ。
「……うッ……」
その事実と負い目ゆえに、拳を振るうことも叶わず……その手は、力無くアーマンドの襟から滑り落ちてしまった。
「……ケッ、お高く止まってんじゃねーぞ」
「凡人には理解できねー世界だもんな。俺達ごときに構ってちゃ、時間の無駄だぜお嬢様」
「行こーぜ。ちょうどオープンしたばっかのカフェとかがあるんだったな」
「お、いいねー! うっぜぇ説教の口直しにはコーヒーがピッタリだ」
「はっ、はははは! ちげぇねぇ!」
それを見届けたアーマンド達は、俯くフィリダを一瞥し――聞こえよがしに罵声を上げながら、路地裏から立ち去って行く。
若きエアレイド達の笑い声がひっきりなしに響いていた空間が、少女1人を残して静寂に包まれる。
「……」
そして、えもいわれぬ無力感が津波のように、彼女の胸中に覆いかぶさった。
自分にできることなど、なにもないのか。その思いが、白い頬を濡らしていた。
(私は……間違ってるの……? ねぇ、お母様……)
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