第2話 翼の姫君
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の装甲服を纏う戦士――エアレイド部隊の隊員も数人いたが。フィリダは彼らには目もくれず、子供に向かってひたすらに突進していく。
――もとより、アテにはしていないからだ。
「……角度、高度……この、タイミングッ!」
危険区域から、要救助者を安全かつ迅速に救出するための動作――エンジン出力の加減から、要救助者を衝撃で傷つけないための速度調整、地面に足が当たらない高さなど――その全てが、綿密に計算された一瞬であった。
永きに渡る歴史と文明を色濃く残すこの街に敷かれた、アスファルトの上を滑るように。彼女の翼は、這うように宙を翔ける。
「――ッ!」
……そして、声にならない叫びと共に。彼女の腕に抱かれた少女は、その窮地から流れるように飛び去っていった。
刹那、足場は歩道の上に音を立てて墜落し、復興に尽力していた英国紳士達の注目を一箇所に集めている。
「……よかった」
「――わぁ、すごいすごい! 私飛んでる! 飛んでるよ、お姉ちゃん!」
「ふふ、そうね……すごいね」
一方、弧を描き、再び空へ舞い上がったフィリダの腕の中で、少女は無邪気にはしゃいでいた。そんな子供の純真さに、彼女は穏やかな微笑を浮かべている。
そして、民衆の歓声を浴びて街の中へ降り立ったフィリダの前に――少女の母親らしき女性が駆け寄ってきた。
「ああ……アリッサ、アリッサ!」
「ママぁ!」
「良かった……本当に……!」
その女性は愛する娘を必死に抱きしめながら、膝をついて安堵と共に泣き崩れていた。恐らくは、ほんのわずか目を離した隙に起きた、一瞬の出来事だったのだろう。
「ありがとうございます! 本当に、なんとお礼を申し上げればいいのか……!」
「いいえ。これも、貴族として当然の務めです」
「貴族……? あ、あなたはもしかして……! あの、名家エイリング家の……!?」
フィリダは、母親の追及を聞き終えないうちに踵を返し、その場から無言で立ち去って行く。
「お姉ちゃん、また会える?」
「……会えるわ。こんな時代でも、生き抜けばきっと、会える」
「――うん! 約束だよ!」
「ええ、約束よ」
その途中、少女の問いかけに一度だけ笑顔てから――フィリダは改めて、その場から姿を消した。
だが、飛び去ったわけではない。本来ならば今すぐ帰投しなければならない状況であるが、それでもまだ帰れない理由が彼女にはあった。
「おぅ、お疲れさん。相変わらずお見事な手腕だぜ」
「ああ。さすがは名門貴族のお嬢様だ。あの飛びっぷり、絵になるねぇ」
彼女が向かった先は……民衆に混じるように一連の流れを静観していた、特殊部隊エアレイドの隊員達だった。
騒動に紛れて路地裏に場を移していた彼らの前に、フ
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