Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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するなぁとは思ったのだ。それがまた、男女入り混じった歓声に聴こえたものだから、楽しい催しか何かでもしているのかと。
なのに、出迎えてくれた「彼」は慌てた様子で自分を引き止めたがっていて。早くハウィス達に会いたかった自分は、「彼」の制止を振り切って騒ぎの中心へ向かい……
「……貴女の所為じゃないし、「彼」の不手際でもない。私が油断したの。真剣を握ってる時は相手から目を逸らしちゃ駄目だと解っていたのに、突然聞こえた貴女の名前に気を取られて……そうして、今度は貴女を死なせてしまうところだった」
ハウィスの右手が、自身の左脇をそっと撫でる。奇しくもマーシャルが負傷した箇所と同じ其処には、ミートリッテを呼ぶ「彼」の声に反応し、振り向きかけた時に刻まれた傷が残っている筈だ。
「おにいさん……ベルヘンス卿が助けてくれたあの後からの私の記憶が一部曖昧なのは、風邪をひいて寝込んでたんじゃなくて、本当は桃の暗示で眠らされてた所為……なんだね?」
「それもある、が正しいわ。蘇生処置を施したベルヘンス卿がエルーラン殿下へ鳥を飛ばした後、貴女は実際に三日間くらい熱で寝込んでいたから。桃の果汁が届いたのは、熱が治まる頃だった。それで、怪我に関する記憶は忘れさせたほうが良いと、私達三人で決めたのよ」
「「彼」とベルヘンス卿とハウィス、で、三人?」
「そう」
「……そっか……」
浅く頷くハウィスに、ミートリッテの拳がきゅっと固くなる。
鮮血を舞い散らしながら地面に転がるハウィスと、剣を滑らせた勢いで倒れ伏す騎士候補生らしき男性と、周りを囲む村の人達の悲鳴と。
幾ら暗示を使われていたと言っても、大切な人のあんな惨劇を綺麗さっぱり忘れていた自分が信じられない。
「……あれ? でも、あの状況だと村のみんなは騎士団の存在もハウィスの仕事も知ってたんでしょ? 七年間、私の耳にそれらしい会話が一音も入って来なかったのは、エルーラン王子が口止めしてたから?」
「いいえ。あの日の出来事はみんなの総意で自主的に口を閉ざしてもらってるし、ネアウィック村の秘密に緘口令を出していたのは、国王陛下と王太子殿下よ」
「ふぇっ!? こ、国王陛下と王太子殿下ぁ!? なんでそんなに偉い人がぞろぞろと!」
「エルーラン殿下は「第二王子」で「王太子付きの騎士団長」よ? 国軍の上に立つ王族付きの騎士団を許可無くひょいひょい動かして良い立場ではないわ。不用意な戦力移動は、国内外の権力者や民の余計な不安を煽ってしまうもの。バーデル側に話を通すのも、かなり苦労してたみたい」
「バーデルも知ってるの!? って、ああ……だから「自警団員に」「直接」請願してたのか」
「隠して行えば大事になる話でも、最初に打ち明けておけば有利な条件で不可侵の約束を勝ち
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