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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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したクセに、随分な身勝手ぶりよね」
 泣きそうな顔で微笑むハウィスに、ミートリッテは何も答えられない。
 アルフィンから離れた件で彼女に物を言えるのは、ブルーローズの行いで生まれた被害者(アルフィン)本人か、アルフィンの世話をハウィスに託したグレンデル夫妻だけだ。ブルーローズと同じ立場のシャムロックには、同情も非難も許されない。
 押し黙る娘の横顔をじっと窺っていたハウィスも、一息吐いた後、再び目を伏せて語り出す。
 「それからはミートリッテが知ってる通りよ。高熱で倒れた貴女を抱えて家に戻った後、私は貴女を引き取る為にエルーラン殿下から村長様を介してこの家の所有権を買い取り、アルスエルナ王国軍所属騎士の称号と任務を授かった。貴女には、犯罪抑止を目的とする後催眠暗示と健忘暗示を施した。私が騎士の仕事を正式に始めたのは、二人で南方領を巡るようになった頃から。最初は南方領各地の防衛体制を密かに視察。次はネアウィック村の自警団と村外に配置されている騎士達の訓練を観察し、組織運営に関する改善策を提言。そして……私自身が真剣を握り、振るう訓練」
 一時期凄まじい勢いで「未知の料理(?)」を量産してたのはその所為だった。ごめんなさいと頭を下げるハウィスに、ミートリッテは無言で頭を振る。
 彼女は剣そのものを怖がっていた。第三王子と騎士達の指導で多少は慣れたとは言え、刃物を扱う料理で集中力が欠けるのはどうしようもない。しかも、同居人には事情の一切を隠していたのだ。自身が抱えているものを悟られまいと、毎日毎日必死だっただろう。
 そんな彼女を、今のミートリッテが責められる筈もない。
 「……家事の一つもまともに熟せない、情けない状態だったからね。実を言えば、貴女が一人で南方領を見て回りたいと言い出した時、ちょっとだけ気を抜いてしまったのよ。幼い子供の一人旅という「体裁」を除けば、貴女は村の外で思う存分好きな事を学べる。私は訓練を見られる心配が減り、鍛錬に集中できる。どちらにとっても都合が良い話だなって。そういう安易な考え方をしたから……貴女にも、ブルーローズと同じ過ちを犯させてしまった」
 南方領貴族の屋敷から物が消失する事件は、発覚当初、貴族の間でも極秘事項とされていた。
 ブルーローズが姿を消して数年。上がり続けた税金への不満が社会全体に蔓延する中でまたしても義賊が現れたとなれば、治安や経済や人心の面で厄介な事態に陥るのは目に見えていたからだ。最悪の場合、税金を投じて強化した筈の防衛力にまで、他領の人間からも口出しされかねない。
 政治能力の疑問視。
 執政者達にとってそれは、なんとしても避けねばならない進退問題だった。
 しかし。
 一度目は沈黙。二度目は静観。三度目は水面下の対策。四度目は近辺の調査。五度目は罠を張り。六度目は警備を増強して
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