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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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子は、立地でも経済でも行き止まりのネアウィック村に侵入し、自警団を装う騎士達や菜園主に追われている様子も無く、たった一人で水際に立っていて。
 (何を見てるの? 盗みが目的じゃないなら、何をしに、此処へ来たの?)

 あなたは

 「どうしたい?」

 尋く声は少し、震えた。
 「これから、どうしたい?」
 女の子の肩が微かに揺らぐ。
 やや間を置き、海に向かっていた視線がゆっくりと振り返り……


 「ちょっと待った。」
 「?」
 軽く持ち上げた左手で話を遮るミートリッテに、ハウィスの両目が瞬いて傾く。
 「いや、その。もしかして、なんだけど……。あの時の私、ハウィスには自殺志願者に見えて……た?」
 恐る恐る尋ねてみれば、返って来たのは肯定を表す頷きと、苦笑い。
 「うわああ……っ! それで、生きたいかどうかを尋いたんだね!? 自殺するつもりなら止めようと思って……っ」
 「いいえ」
 顔を見合わせる前からそんな心配をさせてたのか! と、頭を抱えた瞬間、ハウィスがきっぱり否定する。
 「……いいえ。貴女が「もう嫌だ」と……「死にたい」と答えていたら、私は即座に貴女を殺していたわ。そして、私も一緒に死んでいた」
 何でもない事のように紡がれた言葉が氷の槍となり、ミートリッテの脳と心臓を貫く。衝撃で跳ね上がった視界の先で、群青色が目蓋の奥に隠された。
 「他にどうしていいのか分からなかったから。せめて最後くらい、誰かの願いを叶えてあげたかった。浮浪者(あなた)が諦めているのなら、もう良いよって。もう、苦しまなくて良いよって。そう言ってあげたいと、思ったの」

 『死にかけてたハウィスを生かす為、私が手札を失くさない為に』
 
 (エルーラン王子は……ハウィスを一目見て全部解ったんだ)
 彼女は失望し、絶望していた。
 争いを繰り返し他者を虐げるばかりの人間にも、それを黙って受け入れている世界にも、誰かに生かされているだけの無力な自分自身にも。
 苦しみすらとっくに通り越して。耐えられなくて。彼女の精神は無自覚なまま壊れ、砕け散る寸前まで追い込まれていた。
 「ハウィス……」
 「でも、貴女は生きたいと願った。どんなに辛くても、誰かと一緒にこの世界で笑いながら生きていたいんだと訴えた。驚いたわよ? 私よりもずっと幼い満身創痍な女の子が、自分を切り捨てた社会を、それでもまだ諦めてなかったんですもの。酷い目に遭って尚人間の子供でありたいと泣き叫ぶ貴女を手に掛けるなんて、私にはできなかった。失くしていた色彩が貴女を中心にして広がっていく……目が覚める感覚だったわ。この小さな命が此処に在りたいと望む限り、全力で護ろう、全力で生かそう、それが私の存在理由なんだ。とさえ思った。……アルフィンの手はさっさと離
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