Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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ミアの、義父の帰りを待ち続けるアルフィンの幻影が重なる。
体の奥でパリン、パリンと、硝子が砕けていくような音が響く。
ああ……この世界はなんて醜く、残酷で、理不尽なのか。
確かに、子供や弱者を助けたい護りたいと言いながら、その実ウェミアやアルフィンのような犠牲者を生み出していたブルーローズは、方法を間違えていた。人間世界の仕組みについて少しでも考えていれば、そういう事も有り得ると気付けた筈なのに。盗まれた側の事情には目を向けようともしなかった。本当に、短絡的で愚かだとしか言い様が無い。
そんな自分達にエルーラン王子は、社会の在り方に不満や意見があるなら、自分とは立場が異なる者達と話し合いを重ねて問題点を洗い出し・相応の後ろ楯を得て保身を図り・周囲の状況を見極めつつ・権力者を相手取り・一定の譲歩を見せながらも・己側の利になる物事を引き出せ、と言った。それはきっと、犠牲を最小限に抑えられる「正しい方法」なのだろう。「ある程度の力を身に付けていたブルーローズは」、彼の言葉通り「正しく」在るべきだったのかも知れない。
けれど。
ならば、誰かに何かを託して結果を待つ余裕も無い飢餓と毎分毎秒戦い続けている浮浪者達や、救助の求め方を覚えるより先に最も身近な庇護を失った幼い子供達は、いったいどうしたらいい?
執政者達を束ねる王族の支援も届かない、稀に与えられる一般民の気紛れな同情や義賊の支援が無ければコップ一杯分の飲み水も満足に得られない彼らにまで、膨大な時間と周到な用意が必要な「正しい方法」を踏襲しろと言うのか。
そもそも、弱者や被害者を「足手纏い」「汚点」「生産性に欠ける塵」と蔑み疎むこの社会に於いて、幼い子供や障害を負った者達がその身一つで犯罪行為も無く交渉に不可欠な後ろ楯を得るなんて、余程の幸運と強運に恵まれていなければありえない話だというのに。
両親を目の前で斬り殺されて泣き叫ぶマーシャルが周囲の人間にどんな目で見られていたか、エルーラン王子は知らない。
マーシャルの心が壊された瞬間を、年齢に相応しくない異様な言動の数々を、エルーラン王子は見ていなかった。
職を失った元貴族のウェミアが、最終的には売春と呼ばれる犯罪行為に走るしかなかった現実を、エルーラン王子はどう捉えているのか。
今この瞬間、全身ズタボロなあの子を前にしても、彼は「正しく在れ」と言え……
(……あの子は…… 何故、こんな所に居るの?)
物流も人の流れも少ない国端では、盗める物など限られている。一日でも長く生きたいと願うなら、捕まる可能性がどんなに大きくなっても、人が多く行き交う場所へ向かう筈だ。現にブルーローズもそうしていたし、居住地の規模と犯罪発生率は大体比例する。
なのに、遠くから来た浮浪児であろうあの
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