84舞の悪夢2
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舞の家
「…ただいま」
「お帰り、舞」
「…お母さん、この子、昔よく話してた子、ゆういち君って言うの… 今年同じクラスになって、子供の頃いっしょに遊んでたのがわかったの… 部屋に上げてもいいでしょ」
「まあ、いらっしゃい。 でも舞が佐祐理さん以外連れて来るなんて初めてねぇ」
そう言って感心しながらも、娘のボーイフレンドを見定めている間に、何か特殊な感触を思い出す母。
(何だかあの人と… 舞のお父さんそっくり…)
「おじゃまします」
「ええどうぞ、汚い所ですけど、ごゆっくり」
祐一の父が預けた札束を使い、倉田の家が準備した家に住んでいる川澄一家。 贅沢な作りでは無かったが、少し前の標準的な家だった。
「ねえ舞… 昔、お父さんの話をしてあげたでしょ」
「…うん」
「この人ね、雰囲気も声も、舞のお父さんそっくりなのよ」
祐一は「自分はその息子です」と考えそうになったが、心の声で聞こえるといけないので、極力思考を抑えた。
『…ねえ、お母さん』
「え?」
その話を聞いたせいか、明らかに口調が変わった舞。
『…二人っきりにして欲しいの、お風呂にでも行って来て』
男を連れ込んでおいて、母親にそんな事を頼む娘はいないが、今の舞は真剣だった。
「そう……、お邪魔しちゃ悪いわね、じゃあ、たまにはサウナにでも入って、体を温めて来るよ」
まるで秋子や美汐に命令されたように、目が虚ろになって、風呂へ行くための準備を始める母。
「舞、何したんだ、叔母さん出て行っちまうぞ」
「…今日は祐一に話があるの、お母さんには聞かれたくない」
この時も祐一は、舞の母と別れた男が生きていて、あまつさえ他の女と結婚して、子供まで作っていたのを、母親に聞かせたく無いのだと思っていた。
「じゃあ、行って来るね…… お菓子もあるから、ちゃんと出すのよ」
「…うん」
祐一は選択肢を誤ったが、結構前の分岐点で間違っていたので、舞に喰われる。
やがて、母が楽しそうに出掛けた後、戸締りした舞が口を開いた。
「…祐一、会いたかったのは子供の私だけじゃない。 私だって、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと……」
「舞っ!」
止まらなくなった舞を元に戻そうと、大きな声を出して、肩を揺らす。
「ずっとっ! 会いたかったのっ!!」
その目はまた、昼間の教室と同じで、祐一だけを見て、祐一だけを求めていた。 まるで何かの中毒患者のように体を震わせながら、溢れる涙を拭おうともせずに。
「そうだったのか… 悪かったな。 俺、7年前の記憶が無いんだ」
「7年じゃない、10年よ…」
舞を揺り起こしていたはずの祐一は逆に肩を捕まれ、次第に追い詰められて行く。 腕の方も、美坂姉妹を合わ
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