84舞の悪夢2
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た。 もちろん見た事もない父親など最初から必要無い。
「…私を祐一の物にして、だから代わりに祐一を頂戴っ」
そう言って、唇をこすり付けて来る舞。 キスとか吸うといった行動とは全く違ったが、やがて本能に命令されたのか、口を大きく開けて祐一に襲い掛かる。
その時、哀れな祐一クンはこう思った。
(喰われる…)
再び口を合わせても、香里のように噛みはしなかったが、お互いの歯がゴリゴリ当たるほど乱暴に口を合わせ、可能な限り舌を奥に押し込み、舌も、歯茎も、頬の裏側も狂おしい程に舐めて行く舞。
祐一の心も体も魂も、何もかも欲しかったのかも知れない。
(だめだっ、姉弟でこんな事っ!)
口を封じられているので、心の中で叫び、舞を拒む祐一。
(私が嫌いなの? それともこんな汚い事したくないの? テレビで見たのに… 好きな人とはこうするって…)
とうとう祐一の心の声に正確に答えた舞。 今までは教室の中で心の声で叫んでも、それに佐祐理が平然と答えても全く答えなかった舞が、体と同じように心まで晒そうとしていた。
(お前… 聞こえるのか? ずっと聞こえてたのかっ?)
(聞こえてた… そんな事できるのは化け物だって言われる。 でも祐一とだったら、もうどうなってもいいっ!)
(知ってるだろ。 俺達姉弟なんだっ、舞が産まれた後、記憶を消された親父と、俺の母親の間で俺が生まれたんだっ)
(姉弟でも、相手が欲しければきっとこうする。 血が繋がってるだけじゃ嫌っ)
心の叫びを聞いて、次第に舞に囚われて行く祐一。 耳で聞かされる声より純粋なだけ、その声は祐一の心の奥底に届いた。
(でも俺には他に女が一杯いる… もう香里や栞、名雪とは付き合えないかも知れないけど、今はものみの丘から人間になって降りてきた狐と、7年前、俺と約束してた子がいる… みんな、俺がいないと死んじまうんだっ)
(そんなの知らないっ、私も祐一がいないと死ぬっ!)
そこで祐一には、舞の心の奥に「みんな消してやる、祐一の前にいられないようにしてやる」と言う、恐ろしい闇が見えた。
(お、お前…)
『そうよっ、私は化け物っ! でも祐一は遊んでくれたっ、あの日も、あの日も、ずっとっ、ずっと遊んでくれたっ! そうでしょっ!』
やっと口を離した舞だったが、涙と涎で綺麗な顔はぐしゃぐしゃになっていた。 しかし祐一も、不思議と汚いと言った考えは浮かばず、崇高な物でも見る思いがしていた。
「舞…」
余りにも一途な思いをぶつけられ、その姿と心を見ても「美しい」とまで思ってしまった祐一。 もちろんその思いは舞にも伝わった。
『抱いて…、私を傷付けてっ、祐一以外、誰も触りたくなくなるよう滅茶苦茶にして、祐一の物だって印を付けてっ!』
「ああ……」
それは油断した瞬間、心の全てを奪われた
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ