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KANON 終わらない悪夢
83舞の悪夢
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…………」
 祐一には効かないのを知っていながら、命令しようとした美汐。 それすら舞の言葉で沈黙させられる。
「すみませんね〜、祐一さんはお借りして行きます。 ちゃんとお返ししますからね〜」
『…嫌、返さない… どこかに行って』
「……うわあ〜〜〜っ!」
 何とか丸く収めようとした佐祐理の言葉も否定し、美汐を睨み付けて追い払ってしまった舞。
 これがまた新たな伝説(笑)になって校内を駆け巡るのに時間は必要なかった。
『さあ… 一緒に帰りましょう』
 今日、何度目かの命令で、もう「断る」と言う選択肢すら思い浮かばない祐一は、泣きながら走り去る美汐を見送る事しか出来なかった。
「大変ですね〜、天野さん泣いてましたよ」
「…いい、祐一に悪い虫が着くよりずっといい」
 佐祐理も祐一も、今は舞が「お姉さん」で「幼馴染」として、他の女を排除したのだと思っていた。 二人がそれは間違いだと気付くには、後30分ほど必要だった。

「舞のお母さんと会うのも久しぶりですね〜、何かお茶菓子でも買って行きましょうか」
『…お願い、今日は佐祐理も帰って… お母さんも驚くと思うから、泣いちゃうかも知れない』
「え…? そうですね〜、家族の問題ですから… でも、佐祐理にできることがあったら何でも言って」
「…わかった」
 祐一からすれば、佐祐理がいてくれたら、どんな修羅場でも、ほのぼのさせてくれそうな気がして期待していたが、舞は追い返してしまった。
「じゃあ、明日学校で」
「ああ、ありがとう、佐祐理さん」
 小走りに走って行く佐祐理を見送ったが、その目に光る物が見えたような気がした祐一。
「なあ、佐祐理さん泣いてなかったか?」
「…大丈夫、佐祐理はこれぐらいで挫けない」
「そうかなあ…?」
 心配する祐一だが、もちろん佐祐理は挫けていなかった。 倉田家が借りている舞の家の隣に裏口から駆け込み、ビデオデッキとカメラの準備を始めていたから…
 ちなみに、その目は涙に濡れていたのではなく、「妖しく光っていた」が正解である。

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