83舞の悪夢
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た魔物が、喜怒哀楽の「哀」の感情を持っていた。
「どうしたんだ? 何で泣いてるんだよっ」
もしかすると、舞も祐一が弟だと薄々知っていて、この写真を見て確信を持ったのかも知れない。その時の祐一は、そう思っていた。
「この子、祐一なんでしょっ!」
「そうだけど」
泣きながら顔を上げた舞を見て、また周りの雰囲気が怪しくなった感触に、嫌な汗を流す。
「ゆう… いち……」
「は?」
全身を震わせながら席を立って、写真を大切そうにポケットに入れ、再び視線を祐一に戻すと、その目からは滝のような涙が流れ出していた。
「だから、どうしたんだよっ?」
「ゆ〜〜いち〜〜〜〜っ!!」
思いっっ切り抱き付かれ、後ろに転びそうになったが、美汐の時と同じように、何とか持ちこたえる。
「待ってたのっ! ずっと一人で待ってたんだからっ! ずっと一人で守ってたんだから〜〜!!」
涙で声が裏返り、声がかすれながらも、何とかそこまで言い切った舞は、祐一に縋り付くようにして胸で泣き始めた。
「うわあああ〜〜〜〜〜〜〜!!」
(ベストショットですわ〜〜)
その「舞ちゃんクラスメートの前で、祐一さんに絶叫告白の巻」は、佐祐理によって最初から最後まで、しっかりビデオに収められたと言われている。
「一人で… 寂しかったっ、ヒック、ずっと、ずっと………… うわああああ〜〜〜〜!」
ある程度、こんな状況に慣れてしまった祐一は、また自分の分身が良からぬ事をしていたり、結婚していたり、4週間程で消えて酷な思いをさせて来たのでは? と想像するのだった。
(そう言やあ、天野と舞って雰囲気似てるな… やっぱり7年前の俺が何か…)
したのは間違いない。それからの休み時間、祐一の胸の中で約5分間泣き続け、周囲に大量のギャラリーを作った舞は、眠るように気を失った。
「また、犠牲者よ…」
「5人目ね、それも普通の男子が相手にしない子ばっかり、凄いマニアね」
また、周囲の無責任な噂が先行し、おとしめられて行く祐一だったが、今回は美汐のお陰で犯罪者扱いは受けなかった。
「まあ〜、祐一さんって、舞の昔のお知り合いだったんですね〜」
「そうなのかな? 覚えてないんだけど…」
涙を流しながら、穏やかな表情で眠っている舞を抱き起こし、保健室に連れて行こうとする祐一。
「奇跡よ、今度もきっと奇跡なのよっ」
「川澄さんも昔、相沢君に助けられたのよっ」
美汐の尽力のお陰で、周囲の声(洗脳済み)も、かなり好意的になっていたので、前のように男子数人に連行され、体育館裏でボコられる心配も少なくなっていた。
「と、とりあえず、保健室に行こうか…」
また新しい奇跡でも見たように、喜んでいるクラスメートや、美汐の術が効いている香里は、二人を暖かく見守っていたが。
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