蝉時雨
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破壊。抵抗の手段の奪取。そして、絶望的な死。
あまり好きな殺り方ではないのだが……そうするようにと、幼馴染さまのご命令だしな。
「……! …………っ!!」
「なんで自分がこんな目に――とか言いたそうな目してんな。ま、理由なんてないんだけどな」
「……………っ!?」
男の顔から一気に血の気が引いて行く。驚愕といった表情。だってそうだろう、俺とこの男は初対面、はじめましてなんだから恨みなんて、憎しみなんてどう頑張ったって抱きようがない――俺の場合はな。
でもこいつにとっちゃ話は別だ。
「覚えてないんだぁ? アタシのことぉ?」
甘い。甘くて胸焼けがする、蛇が舌なめずりをしながらゆっくり獲物を縛り上げる。
「アンタ……の所為で……お姉は死んだ」
胸に垂直に突き立てられたナイフに力がこもり
「十年前。今日と同じ蝉の声が五月蠅い夏の日。学校から家に帰宅途中だったお姉をっ!
アンタが物陰に引きずり込んで、襲った!」
怒りで、憎しみで、ナイフを握る腕がぷるぷる震え
「知ってる? 傷ついいたお姉がその後どうなったか……教えてあげるよ」
「…………っ! ……………!!」
「ビルから飛び降りたんだよ」
ナイフの刃を突き刺したまま、滑らせるように動かした
「……!? …………――――」
たった、それだけ。
それだけの動作で男は絶命した。
口からはげぼげぼと血を吐き、生前はどす黒かったであろう腹の中を惜しげもなく晒し「見てみて、こつの腹の中綺麗な――サーモンピンクだよ」五月蠅く鳴く蝉の声の中に幼馴染の喜びとも哀しみとも言えない、一言で言えば狂気に狂った笑い声が辺り一帯に響き渡った
蝉時雨fan
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