MR編
百四十九話 別れの時が来るまでは
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意見を聞きたいと、彼は言ってくれているのだから。後は、自分の意見を彼にぶつけるだけだ。
「んじゃ、聞かせてもらおうか、答えは?」
「…………」
一度大きく息を吐いてから、アスナははっきりと告げた。
「──ゴメン、その覚悟は、出来ない」
「…………」
リョウが無言で続きを促す。その瞳を見返しながら、アスナは言った。
「リョウの心配は……正直に言えば嬉しいよ。それに、リョウが正しいのも分かるの、でも……それでも私は、最後の瞬間まで、ユウキとずっと一緒にいることを諦めない。ユウキがきっと自分の運命に打ち勝って、何時までも一緒に居られるって、信じてる」
「……お前、その意味分かって言ってんのか?」
其れは賭けにすらならない、単なる願望だ、信じるというよりは「そうあってほしい」事を諦められないだけの子供の、ただの我儘、よく分かっている。気が付かなかっただけで、あの雨の日にもそう言われていたのだし、今はその意味がはっきりと分かる。それを諦めることで、得られる覚悟はきっと、自分が負う傷を浅くしてくれるのだろうということも。けれど……
「うん。ごめん、でも……それが、私の答え」
その傷から、痛みから逃げたくないと、アスナはそう思った。ユウキは、自分が彼女に体当たりでぶつかって行ったから、これだけ短期間で強い絆を掴めたのだと言ってくれた。なら、彼女との触れ合い方はそれ以外ではダメなのだ、たとえ時間がないとしても、いや、無いならばこそ、自分を庇って守りに入るのではなく、何のためらいもない、ノーガードの体当たりでなければ。
「それを受け入れたふりをしても、きっと本当の私はそれを受け入れられない。だからきっと、そうしてユウキと向き合う私の中には嘘が残る……私は、ユウキとの向き合い方に、嘘も演技も持ち込みたくない、有りのままの私で、ユウキと向き合い続けたいの」
「…………」
「だから私は、私がしたいようにユウキと向き合いたい。それが見たくない物を見てないだけだって言われることでも……それが、私を傷付けるとしても構わない!私は、私も!ユウキの運命と戦う!!」
「…………!」
そうだ、自分は、ユウキの運命と戦いたいのだ、最後の最後まで、死にゆくだけの運命だなんて絶対に認めない、たとえその先に待つ結末が何であっても、それが己を引き裂く未来だったとしても「ユウキと共に生きる未来のために」あり続けたい、それが、自分の、結城明日奈の意志だ。胸を張って、今はそう言うことが出来た。
数瞬、驚いたようにリョウが目を見開いて彼女を見る、しかし彼はフッと苦笑すると、呆れたように後ろ手に頭を掻いて、ため息をついた。
「あぁ、そうか……ったく、かなわねぇよお前にゃ……っとに、俺の義妹様はおつえぇ騎士姫さんだ」
「!」
「……わぁったよ、それがお前
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