MR編
百四十九話 別れの時が来るまでは
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は良かったが、フィールドに出てたからな……必要以上に踏み込もうとしねぇんだ」
「…………」
「けどな、お前は違った。彼奴と同じような歳で、趣味も合ってて、しかもつえぇ。いつの間にか打ち解けて、ダチになって……お前と話してから、彼奴、地味に割と明るくなったんだぜ?」
「……そう、なんだ」
その声が、今までに聞いたどんな声より優しく、だからアスナには分かってしまう。キリトもサチも彼にとっては本当に大切で、だから彼から今向けられている感情は、本当のそれなのだと。
「まぁ、だからなんだ……俺からすりゃ、借りがあんのはむしろ俺の方なんだよ。お前は俺の家族に、彼奴に色んなもんをくれた……恩人って奴だ」
「そ、そんな事……」
「だーかーらー!」
尚も食い下がろうとしたアスナの言葉を遮って、リョウは続けた。
「いい加減、そう言う引け目とか遠慮とかやめれ。お互い貸しがあるなら貸し借りはねぇってことで、手打ちでいいじゃねぇか……面倒くせぇんだよ、そういうの」
「……いいの?」
「いい!つーか柄にもねぇ話したな……だから、なんだっけ……あぁそう。俺にお前を“許させろ”ッつー話だ。……じゃなきゃ、対等な立場で話せん」
「……そう、だね」
気が付くと、アスナは少し自分でも意外なほどストンと頷いていた。実際、℃あっても結局今からリョウには自分の意志を伝えなければならないのだ。そこに負い目や引け目を持ち込んだままでは、リョウと真に対等な立場で意見を交わしたとは言えないだろう。
本当は……許されないことでリョウへのせめてもの償いを立て、その上で話をしようと思っていた。しかし、それをリョウは望んでいない。あくまでもどちらが優劣という話ではない、対等な立場に立つことを、彼は望んでいたのだ。
「……ごめんなさい、ありがとう」
「礼も詫びも要らん。ったく、つか俺ら、こんなわだかまり残したままよくまぁ一年同じ学校通ってたな……」
「そうだね……ほんと……」
きっと、価値観の相違や罪悪感への認識の差などの面で、わだかまり自体はずっと前からあったのだ。其れこそSAO時代、あの宿屋で彼にラフコフ討伐戦への参加を依頼したときから、ずっと。
ただそれは互いに互いの事を知らなかったから表層化しなかっただけで、仕方ないことでもある。アスナとリョウでは生まれも育ちも経験も価値観も、あるいは一部では倫理観すらも、何もかもが違うのは分かっていたことなのだ。
結局の所、互いの考えを知った後でそれを認め合い、その上でどうするかを考えていくことでしか、その溝を埋めることは出来ない。ならば、もうするべきことはあと一つだけだ。
「さて、ようやく根本的な話に戻れるな?」
「うん」
舞台は、結局リョウに整えてもらう事になってしまった。けれど今はその気持ちに甘えよう、自分の
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