MR編
百四十九話 別れの時が来るまでは
[7/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の事気にしてたのか?」
驚いたようにリョウが言う、確かに、彼にとっては「未だに」なのかもしれない。しかし……
「……忘れるなんて、出来る訳無いよ」
口元を硬く引き結んで、アスナは首を横に振る。当然だ、忘れたことなど無い。自分は彼に、人を殺させたのだ。いかなる理由があろうと、彼ら自身が否定しようと、それは紛れもない事実だ、あの日彼が、彼らが奪った命は全て、アスナ次第で奪わなくても済んだはずの命だったのだから。
「なのに……忘れて無かったはずなのに……私、あんな事言ってた……ホントは、一生リョウには返さなきゃいけないものがある筈なのに……ゴメン……ごめんなさい……ッ」
「…………はぁ、ったく、ばか真面目っつーか何つーか……そこは許させろよ……」
前髪をガリガリと掻いて、困ったようにリョウが視線を彷徨わせる。しかし、すぐにそれはアスナへと固定された。
「一生返すってな……もう散々お前から貸しは返してもらってんだろ」
「……えっ?」
「……ったく、旦那も旦那ならお前も大概無自覚化かよ」
呆れたようにため息をついて、リョウは苦笑してアスナを見る。
「……お前がカズに……キリトに……自分は守るほうだって、言った時の事、覚えてるか……?」
「それは、うん……」
勿論、忘れるはずもない。キリトがどうして頑なに孤独で居続けようとしたのか、初めてその心の奥底に触れることが出来た日だ。そして……守れないことを恐れ、故にこそ他者と関わる事を恐れていたあの優しい少年に改めて心惹かれ、ならば彼に守られるのではなく、彼を守ることで隣に居続けようと決めた日でもある。
「正直に言うとな……あん時俺、かなり嬉しかったんだわ」
「…………」
笑った彼の表情が本当に嬉しそうで、そんな顔を、またアスナは初めて見たような気がした。
「オレも彼奴も、SAO(あのせかい)じゃ生きるのに必死で、俺は兄貴分気取っても、碌にあいつを守ってやれたこともねぇ。ずっと自分で自分を守ってきた彼奴を、お前は傍に居て、しかも逆に守るっつってくれた。彼奴に取って、どれだけそれが救いだったか、俺にも分からん」
「あれは、でも……」
自分がそうしたかったのだ。そのことで、リョウが自分にたいしてそんな風におもっているなどとは思いもしなかった。しかし、リョウはさらに言葉を続ける。
「それに、お前がダチになってくれてからな、サチが、その前よりずっと楽しそうにしてたからな……」
「サチが……?」
「彼奴の話は聞いたんだろ?」
「……」
頷くアスナにリョウは再び遠くを見るように目を細める。
「中学、高校、両方のダチを亡くして、その後も色々あってな……一時期、ダチを作るつーのが、彼奴にはキツくなってた時期があった。偶に呼んでたシリカなんかも、俺の客で、サチも仲
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ