MR編
百四十九話 別れの時が来るまでは
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してまで、自分とリョウの間にあるわだかまりをなくそうと努めてくれた。その想いに、報いたいと思う。自分とリョウを心配してくれた人たちに、もう心配しなくていいと、そう伝えることでのみ、それは為されるはずだ。
そして二つ目は……アスナ自身のけじめだ。
サチの話を聞いた今となっては、あの日彼がどうして自分にあんな風に警告したのかもよく分かる。結局の所、初めからアスナとリョウは見ているものが違ったのだ。
アスナは「こうあってほしい」と言う「理想的な未来」ばかりを見ていて、本当は分かっているはずの「現実」には一切目を向けようとしなかった。その「現実」を、リョウは見ていた。リョウはそれを見ないことが如何に危険なことであるかを知っていて、足元を見ずに走ろうとする自分に警告を送り、そして自分にとってそれはまさしく致命的な弱点その物だったのだ。
結局、リョウは初めからそのアスナの弱点も見抜いていた。彼の警告は、本当にそれが致命傷になるよりも前に、事前に受け止められる覚悟を決めておかせるためのいわばクッションのつもりだったのだろう。
それすら受け止められなかった結果が、あの言葉だ。
『リョウみたいに、私は人の死を見ても何も感じないほど、強くない!!!!』
「(ッ……)」
胸が、ズキリと傷む。
知っていたはずだ。彼にそれを言ってはいけないと、彼が……刃と呼ばれた自分のそういう部分を嫌っていると、それだけは、彼に対して言ってはいけないと、知っていたはずだ。知っていたはずなのに……あの時、そう言ってしまった。
本当は……本当なら、もうリョウとの関係は破綻していてもおかしくない。何故なら全て分かった上で言ったのだ。リョウにとってそれがどういう意味を持つ言葉なのかも、リョウがそう言う自分をどう思っているのかも、それらを全て分かった上でアスナはああ言ってしまった。あの日、自分の甘さによって十人以上の人間の命を奪う羽目になった彼に、寄りにもよってアスナ自身が。
だから、アスナにはけじめをつける義務がある。あの時の言葉を謝罪し、その上で、そう言ってしまうほどに弱かった自分が、どういう結論を出したのか、彼に伝えなければ……
「……私からも謝らなきゃいけない事があります」
「ふむ」
「あの日、車の中で言った事……本当にごめんなさい」
「……まぁ、身から出た錆だ、ありゃ。お前が気にすることじゃねぇ」
「だめ、許さないで」
「ん?」
気まずそうに目を逸らそうとしたリョウに頭を下げたままで、アスナは言った。首を傾げる彼に頭を上げると、彼女は胸に手を当てる。
「お願い、あの時ああ言った私を、許さないでほしい。私が、貴方にああ言った事だけは……私が、私だけは、あんな事言っちゃいけなかったの。絶対に……」
「……お前、まさかまだラフコフん時
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