その後の世界
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<アリス>は死にました。辛い現実から逃げ出すためにわたしが生み出したもう一人の"わたし"は死にました。
わたしの 本当の 名前は――
「ご、ごめんなさい……」
ぶっきらぼうで怖い顔だけど本当は優しい命の恩人である男の子と一緒にぶつかって痛かったけどわたしのかわりに全てを終わらせてくれた女の子の元に駆けよると、ハートの女王様から出た最初一言が"これ”でした。
「なにについての謝罪ですか」とわたしが訊けば「そ……それは」と口ごもるハートの女王様。ほらね、やっぱりなんにも分かっていない。この人たちは自分たちがしたことについてなーんにも分かっていないんだ。
……でももうそんなことどうでもいいです。だってどんなに謝罪してきても許すつもりなんてありませんから。
「ご、ごめ……」
「許して欲しいですか?」
「も、もちろんっ」
あぁやっと出来た。弱者を見る目。蔑んだ瞳をやっち他者に向けることができたました。わたしは不敵に笑みを浮かべると静かにこう言い放ちました「――じゃあわたしの下僕として生涯ずっと働いてください」と、ハートの女王様たちに命令しました。
この世界に生まれた時からずっと敗者だった、わたしはこの日ついに勝者になりました。
「あんた意外と根性すわってるな」
隣で笑う男の子。
「ねぇーねぇー。同級生だよね? あなたお名前はー?」
<アリス>は死にました。辛い現実から逃げ出すためにわたしが生み出したもう一人の"わたし"は死にました。
わたしの 本当の 名前は――翡翠(ひすい) 彗だよ。
この日初めてわたしはわたしを取り戻りました。 自分の名前を取り返しました。
「そっか。じゃあ、すぅちゃんだねっ」
「なにがじゃあなんだよ……宜しくな翡翠」
この日初めてわたしは恋というものを知りました。 中学生にして初恋です。
薄暗くて真っ暗闇だったわたしの世界
この日 甘酸っぱいサクランボ色の世界となりました――ふふふっ。
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