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真田十勇士
巻ノ百七 授かった術その十

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「学者の学問でありな」
「大名、そしてですな」
「天下人の学問ではない」
 昌幸はここでも強く言った。
「いや、天下人になるにはな」
「学問よりもですな」
「勘、何よりも知恵じゃ」
「それが必要ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「外を巡って知恵も備わろうが」
「それがしの様に」
「太閤様もじゃ」 
 秀吉もというのだ。
「あの方もそうであったな」
「はい、学問はご存知なかったですが」
「それでもであったな」
「はい」
 まさにというのだ。
「知恵がおありでした」
「だから天下人になれた」
「そうでしたな」
「知識も確かに大事じゃ、しかしな」
「知恵はですな」
「同じだけ大事じゃ、知恵も備わっておらぬとじゃ」
「大名、そして戦をするには」
 幸村も言った。
「あの方は」
「足りぬ、だからお拾様はそのこともな」
「特に戦のことをですな」
「そうじゃ、戦の場は常に動き学問だけわからぬな」
「到底」
「そこじゃ、霍去病が言っておったな」 
 漢の武帝の下で若き勇将として戦った者だ、戦の場では常に勝ってきたことで知られている。
「戦の場は常に変わると」
「そしてその通りですな」
「霍去病はまた極端じゃがな」
 武帝から兵法の書を読む様に言われても先の言葉を言って退けたのだ、つまり最初から兵法をわかっていてそのうえで戦の場を知っていたのだ。
「しかしその通りじゃ」
「そしてそれがわかるのは」
「実際に戦の場にいてこそじゃ」
「わかりますな」
「そのことでは大御所殿は天下第一じゃ」
 何といってもというのだ。
「これまで数多くの戦に出て来られた」
「そして何度も勝ち何度も敗れ」
「戦のことをご存知じゃ」 
 何といってもというのだ。
「あの方はな」
「ましてやですな」
「戦を全くご存知ないお拾様では、ましてや」
「茶々様では」
「相手にもならぬわ」
「政もですね」
「あの方は謀もよくご存知じゃ」
 そちらもというのだ。
「百戦錬磨と言ってよい」
「あの方はかつて三河の麒麟と呼ばれていましたが」
「その麒麟がさらに労連を備えられたのじゃ」
「それではですな」
「相当のものじゃ」
 このことは言うまでもないというのだ。
「天下で対することが出来る者は僅か」
「そのお一人が父上ですか」
「お主もであろうが」
 幸村にも言うのだった。
「お主と十勇士達ならな、しかしな」
「それがしが大坂では知られていないので」
「聞かれぬのじゃ、だからな」
「父上が、ですか」
「そう思っておる、わしも縦横に采配を振るいたい」
「もう一度ですな」
「そうも思っておるからな」
 何としてもというのだ。
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