巻ノ百七 授かった術その八
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「あの方も」
「官位を早く進んでな」
「そうしてですな」
「殺められた」
「左様でしたな」
しかも甥である公暁にだ。
「そして源氏の血は完全に途絶えました」
「あの一族はそもそも身内同士で殺し合ってきた」
「それも代々」
「その最期でな」
実朝が殺され殺した公暁も口封じで消された。
「源氏の忌まわしい因縁でもあるが」
「それでも」
「あれはない」
こうも言った昌幸だった。
「無残なことじゃ」
「そうしたこともあるので」
「官位はゆっくりとじゃ」
「進む方がいいですな」
「むしろじゃ」
「お拾様はですな」
「源右大臣殿よりもな」
その実朝よりもというのだ。
「早いな」
「はい、官位が進むのが」
「だから余計に不吉じゃ」
「元服しないうちに中納言で」
「今度は右大臣じゃ」
そこまで早いのはというのだ。
「幾ら何でもな」
「不吉に過ぎますな」
「うむ」
そうだというのだ。
「わしはそう思う」
「では」
「何もなければよいが」
「官位のことからも」
「うむ、そう思う」
こう言うのだった。
「不吉だとな」
「このことも茶々様たってのことでしょうか」
「その様じゃ」
実際にというのだ。
「あの方がな」
「朝廷にお願いして」
「銀や金もかなり使われてな」
色々と贈りものもしてというのだ。
「お拾様の官位を高めておられる」
「それで官位では大御所殿の次にですな」
「高くなられておる、むしろ江戸の竹千代殿と比べても」
「同じ程で」
「あまりにもお若い」
右大臣になるにはというのだ。
「茶々様はこのことについてもご存知ない様でのう」
「このこともですな」
「しきりにされておる」
「おそらく関白にですな」
秀頼をというのだ。
「されたいのですな」
「そうお考えだと思う」
「そうですか、やはり」
「そして太閤にもな」
「なって頂きたいのですな」
「あの方の様にな」
秀吉の様にというのだ、他ならぬ秀頼の父である彼のだ。
「そうなって頂きたいのじゃ」
「だから急いで、ですか」
「官位を上げられておるが」
「それがかえって不吉ですか」
「そうならねばよいが」
「お止め出来る方もですな」
「このことでもおられぬ」
茶々をというのだ。
「残念なことにな」
「難しいことですな」
「全くじゃ、しかしな」
「しかしですか」
「わしなら出来る」
昌幸ならばというのだ。
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