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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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挟まれるはずのスペースが抜けているのかとも思ったが、そんなカラーネームなど聞いたことがない。
「……何者なんだ?」
漆黒のアバターの頭部を軽く傾ける黒雪姫は、しかし逡巡していようと始まらない、と思い立ち、手始めに手近なオブジェクトを壊しにかかる。この手の、会敵前の必殺技ゲージ溜めをレベルが突き放した――――それこそ王クラスがやるなどコスいことこの上ないが、今回は相手が得体が知れなすぎる。このくらいの用心はするに越したことはないだろう。
―――しかし、月光ステージのオブジェクトはゲージが溜まるのが遅いな。まぁ、《焦土》ステージとか、そもそもオブジェクトの数そのものがゼロに近い《大海》よりはマシか。
普通のバーストリンカーはそこに、オブジェクト自体の硬さも悩みの種として追加されたりするのだが、アビリティの力で
常時
(
パッシブ
)
に絶対切断属性を与えられたブラック・ロータスにはその手の悩みはない。手の延長線上に伸びる片刃のエッジは何の抵抗感もなく、白亜のオブジェクトを両断した。
一通りゲージを溜めた黒雪姫は、窓枠がはまった壁ごと細切れにしながら、見通しのいいグラウンドに出る。
梅郷中の広いグラウンドは、細かなタイルを敷き詰めた庭園へと変わっていた。オブジェクトは一切存在せず、南の端に立つ槍のような塔――――もとは防球フェンスの支柱が、長細い影を伸ばしているだけだ。
振り返って仰ぎ見れば、校舎は中世ヨーロッパの宮殿のような姿へと変じている。ゴシック様式とでも言うのか。巨大な円柱が正面に並び、壁面には天使や悪魔の彫像が幾つも突き出しているが、幸い月光ステージは熱帯雨林ステージでの原生生物のような敵性エネミーは存在しない。したがって、あの彫像が突如動き出して襲い掛かってくる、というようなことはない。
だが、何もないということは翻って音が響きやすいということでもある。
月明りと星明りでしか照らされない白い世界の中、ホバー移動の黒雪姫は静かに何の物音もしないグラウンドを見回した。
―――まだ現れてはいないか。あちらは校外がスタート地点になったのか……?
対戦相手のスタート地点は基本、リアルでの座標位置上に置換される。フィールド属性によって建造物内部が再現されていない場合は、ほど近い外の座標にランダム配置されるが。
―――もしくは、私とこの《レンホウ》なる者がごく近い座標上にいたということか?
「フム……」
黒雪姫が小さく吐息を吐き出したその時、はるか頭上――――屋上のほうから小さな物音がしたのを確かに聞いた。
「――――ッ!!」
雷速のスピードでアバターの隅々まで意識を張り詰めされる。
だが、それに対しての返答は少々……いやかなり意外なものだった。
「お、おい!ちょっと待
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