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アタエルモノ
第六話
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たり。
 
『能力』を与えられて、右目の視力を奪われたり。
 
………………後半が明らかに非日常だなおい。
 
俺は天井の木目を見ながらため息をついた。幸せが逃げようが知ったことではない。
 
神谷 沙紀。
 
今の俺の頭の中はアイツの顔で一杯になっていた。
 
本来なら、初めての一人暮らし。親が居ない中で、これからちゃんと生活できるのか心配になったりするものだが、アイツとのこれからの生活の方がよっぽど心配だった。
 
なにが起こるか分からない。比喩ではなく、マジで。
 
性格…………は、色々ぶっ飛んでる所があるけれども、友人として付き合うには面白いだろう。
 
容姿容貌…………は、正直好みのドストライク。性格とオプションがなければ完璧だったろう。

そう、オプション。
 
『能力』という名のオプション。
 
アイツに関する心配はそこに尽きる。
 
いや、考えてもみろよ。
 
例えば、『言霊』。
 
あれで、『八重樫 真広は死んだ』とかいったら、俺の人生終了だ。
 
なんなら、『この世界は滅びる』なんて言った、本当にゲームオーバーだ。
 
例えば『極』。
 
人類最高の身体能力と言うことは、それを利用すればオリンピックにも出放題、なんならワールドレコードすら更新可能だ。
 
もしかしたら、他にもかなりえぐいのがあるのかもしれない。
 
そう考えると、これから俺はどうすれば良いのかに悩む。
 
取り合えず、沙紀の機嫌を損ねないように……………………。
 
 
 
 
 
『……………………(ボロボロ)。』
 
そのとき、なぜか沙紀の泣き顔が頭に浮かんだ。
 
あれ、なんであのときアイツは泣いたんだ?
 
確か、俺がなにかをアイツに言って、それでだ。
 
えっと、確か……………………。
 
 
 
 
『…………いや、意外と神谷って可愛い顔してんだなって思っただけ。』
 
 
 
 
 
あ。
 
俺は思わずベッドから飛び起きた。
 
…………成る程な。
 
俺は恐らくは正解であろう解答にたどり着いた。
 
つまり、アイツは……………………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
普通に生きたいんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『能力』なんてもののせいで、マトモに相手にされなかった。
 
だから、相手が欲しかった。
 
だから、話が合いそうな奴を探した。
 
それが俺だった。
 
 
 
 
 
 
たった、それだけの事だ。
 
 
 
 
 
 
 
アイツは、友達が欲しいんだ。
 
 
 
 

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