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レーヴァティン
第二十四話 都その四

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「この島にはあるでござる」
「そうだな、そしてこの門の向こうはだな」
「都でござるが」
「荒れているな」
「そうでござる」
「確かにな」
 門の向こうに見える都は確かにそうだった、家も店も道もあるがどれも寂れ雑草さえ生えている。
 その都を見てだ、彼はまた言った。
「堺は栄えていたが」
「今の都はあの有様でござる」
 門の向こうに見えている通りだというのだ。
「実に。そして」
「中に入って近くで見るとか」
「よりよくわかるでござる」
 その有様がというのだ。
「遠くより近くでござる」
「見るのはな」
「では行くでござる」
「わかった」
 英雄は正の言葉に頷きそうしてだった。
 二人で門を潜った、この羅生門には鬼はいなかった。だがその門を潜る時にだった。
 英雄は上を見上げてだ、こんなことを言った。
「まさかと思うが」
「羅生門の中はでござるか」
「二階だが」
 そこはというのだ。
「芥川の小説の様にな」
「そこまではでござる」
「荒れていないか」
「左様」
 正は答えた。
「ですから」
「安心していいか」
「はい、死体はござらぬ」
「だといいがな」
「あれは古典からの話でござったな」
「今昔物語集だったな」
 この書から題材を取った作品だったのだ。
「確か」
「そうだったでござる」
「そこにあった話でだ」
「実際にでござる」
 その今昔物語の話ではだ。
「死体が捨てられていたでござる」
「多くだな」
「そうだったでござるよ」
「当時の都には疫病が流行っていた」
「しかしでござる」
 今の東の島はというのだ。
「疫病もでござる」
「流行っていないか」
「そうでござるし戦も」
 それもというのだ。
「この辺りは」
「ないからか」
「近頃は」
「だから荒れていてもか」
「然程でござる」
「戦国時代の中頃の様な感じか」
 応仁の乱が終わり数十年か経った頃だ。
「戦禍や疫病からは離れているが」
「強い主がいないでござる」
「そうした状況か」
「ですから確かな主の下に入ればでござる」
 その時はというのだ。
「治まってでござる」
「そしてか」
「栄えるでござる」
「そうだな。山に囲まれているが」
 見ればそうだった、都は盆地のその中にあった。
「傍にいい川も流れている」
「水をもたらし水運にもなっているでござる」
「この川から他の場所にも行けるか」
「そうでござる」
 その通りだというのだ。
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