第二十四話 都その一
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第二十四話 都
英雄と正は二人で堺を出てそこから都に向かっていた、その道中は然程の距離ではなかったが。
己の前に出て来た鬼火を両断してからだ、英雄は正に言った。
「今日はこれで十度目の戦いか」
「そうでござるな」
「多いな」
こう言ったのだった。
「思った以上に」
「拙者もここまでとは」
「思っていなかったか」
「はい、強い魔物は少ないですが」
それでもというのだ。
「この数は」
「想像以上か」
「半分もないと思っていました」
「そうだったか」
「しかし今日も朝から戦い」
「昼飯もまだだというのにな」
それがというのだ。
「十回だ」
「そこまで多いと」
「何かあるかとな」
「思うでござるな」
「以前はここまで多かったか」
「いえ」
正はすぐに否定した。
「この三分の一もでござった」
「出なかったか」
「そうでござったが」
「今ではか」
「この有様でござる」
そこまで出ているというのだ。
「何かあるのか」
「そうも思うな」
「はい、幾ら何でも多過ぎるでござる」
「それも色々な魔物が出ている」
英雄は正にこのことも話した。
「鬼火だけでなくな」
「つつが虫、死霊、悪天狗等と」
「鬼もな」
この魔物もというのだ。
「出ている」
「様々でござるな」
「その種類だけでなく強弱もな」
魔物といっても様々だ、強い魔物みればそうでない魔物もいるのだ。中には彼等の世界にいる獣や盗賊等もいる。
獣は多いが盗賊は少ない、しかしだったのだ。
「様々だ、しかし」
「数が多いでござる」
「西の島も多かったがな」
「より多いでござるか」
「そう思った、どういうことだ」
かなり真剣な顔でだ、英雄は魔物が多い理由を考えた。
「一体」
「さて、これは拙者にも」
「わからないか」
「どうにも」
これが正の返事だった。
「拙者の以前の旅の時の二倍以上でござる」
「その数はか」
「そして強い魔物が増えているでござる」
「そうなのか」
「はい、妙でござるな」
「都の外は異界」
英雄はこうした言葉も出した。
「平安時代ではそうだったな」
「都は魔を退ける結界がありますが」
「その外にはない」
「羅生門はその境だったでござるな」
「そうだった、だが」
「それは、でござるな」
「あくまで俺達の世界の話だ」
平安時代はこう考えられていた、芥川龍之介の作品羅生門にもその考えが出ているだろうか。
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