西風の兄妹と太陽と闇の姉弟
第24話 成長した姿
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」
「そうなります」
シャーリィは笑っているが明らかにキレている。自分たちを騙した依頼者に殺意を放っていた。
(猟兵を騙した、それも赤い星座クラスの高ランクの猟兵団にそんなふざけた真似をしたのか……その依頼者は終わったな。そして俺たちの依頼者もグルか、ふざけやがって……)
リィンもシャーリィのように自身の雇った貴族に怒りを感じていた。
猟兵の世界では情報が重要となる。自らの団を生きのこらせるにはどんな些細な情報も必要になる。依頼者は猟兵にミラを払い情報を与え猟兵は依頼を実行する。そして死を乗り越えて強くなっていく猟兵団は高ランクの戦士と認められ払われるミラの額も大きくなる。
戦場の死神とまで言われる彼らにとって強さは唯一の誇りであり依頼とは信頼を得るための『約束』ともいえる。
だからこそ依頼者は猟兵に嘘などつくことは出来ない。ましては自分たちの知らない所でいいように使われていれば誰でもいい気はしない、自分たちに嘘をつくという事は相手から舐められているようなものだ。そんな真似ができるのは自分たちの恐ろしさを知らない無知な奴だ。
「ねえリィン、悪いけど今回はお互い無かったことにしない?なんか冷めちゃった」
「同感だな、俺もバカな貴族に用事が出来たし今回はここまでにしておこう」
リィンもシャーリィももはや戦う意思はなかった。シャーリィは戦いが好きだが猟兵としての本分は弁えており利益がなくなれば無暗に戦わないし無関係の一般人を巻き込もうともしない。リィンはシャーリィのそういう所を好いていた。
「さーてと報復はするとして……ザックス、他の皆は?」
「ガレス隊長たちも既に撤退を始めました。後はお嬢だけです」
「なら私たちも行こっか。またね、リィン」
「お、おい!?」
「あはは、顔真っ赤―――!」
シャーリィはリィンの頬にキスをするとその場を後にする。ザックスも後を追うが何故か一瞬リィンに殺気を込めた目で睨みつけその場を後にした。
「……行ったか。しかしザックスは何故俺に敵意をむき出しにするんだ?西風の旅団とはいえ俺だけ異常に敵意が強くないか?」
リィンは自身が何故殺気を向けられているのか分からずに首を傾げる。そこに崖を上がってきたフィーが現れた。
「リィン、大丈夫?」
「フィーか、俺は大丈夫だ。皆の被害は?」
「ん、怪我をした人はいるけど重症者はいない。赤い星座も直に撤退したんだけど何かあった?」
「まあ互いの依頼者が不義理を働いたようだ」
「……そう」
不機嫌そうに表情を強張らせるフィー、彼女も猟兵として自分なりの誇りを持っているのでいい気分はしないだろう。リィンはそんなフィーの頭をそっと撫でる。
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