GENESIS・PROJECT
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奮と先の見えぬ恐ろしさが邂逅し、感情は一触即発の境地に陥っていた。
「…どういう事なのよ」
「奴らの本当の計画を知っているか」
研究者はすぐさま霊夢に聞き返した。彼女は口をまごつかせるが、その狼狽も真実への好奇心に敗北した。今の彼女に在るのは真理への意志である。その『意志的狂気』の真理観が具現化し、研究者の前に巨大な興味として振り降りる。間欠泉のように噴き出る〈神聖なる狂気〉の灰は、すぐさま彼女の理性を埋め尽くす勢いで堆積していくのだ。
彼女はそのプロセスを数秒で行った。躊躇いの表情を僅かばかり、何も言葉に出来ないような呆然の域に達して間もなく、彼女は反問する。悶える彼女にとって、それが最大の武器であったのだ。
「…計画?」
「そうだ。GENESIS・PROJECTとは異なる、もう一つの実験だ」
◆◆◆
「…それはあんたが逃げ出すほど酸鼻を極めるものなの?」
「その通り。――リーダー格の河城にとり、奴は狂っている…」
「私が見ない隙に好き放題やってたのね。会ったらお仕置きしてやるわ」
霊夢はにとりの化けの皮が剥がれそうになった時を迎え、自己との関わり合いにおける彼女のイメージを彷彿とさせた。嘗ては悪戯の度が過ぎたことがあれども、常に笑顔を絶やさないような朗らかさが取り柄だった事を記憶している。確かに機械工学への腕は実力を備わっていたが、こうした形で発揮されることを至極残念に思ったのである。それは独りの我儘に他ならないが、そこには『律せられた義』が宿る事を信じて止まぬ影の自分が存在していたのである。
「…そうだな」
そう言うや否や、彼は徐に語り出した。詩人のような趣を持つ口述は悠久の流れを持ち、意識の往く様を写実的に施しているかのようであった。…思い出したくもない、癌細胞のような過去に触れながらも話し出す研究者は、腫物を故意に突くような痛さを表情に出していた。俯き、闇の畔に佇む孤独者の慨嘆を体現するかの如く悲しみで溜息を幾度も吐かせるのだ。
―――未来生物「GENESIS」の細胞は私たち人間の現在の細胞よりも発達しているのではないか、との見解で実験を始めた、我々人間への細胞移植実験だ。…同胞の研究者を騙し、麻酔無しで細胞を植え付けさせては経過を見たのさ。
―――ああ、その時の光景ほど見難いものは無い。そいつに植え付けられた新たな細胞に身体が拒絶反応を起こしたのだ。身体一面を雀蜂で刺されるような腫れが起こり、皮膚は爛れ、全身火傷のような様相を呈した。内出血があちこちで起こり、目玉さえ飛び出していた。…終始発狂し、何を言っているか分からなかった。いや――これは単なる我情だが――分からない方が良かった。奴は手足を固定した鉄の桎梏が外れそうに思えたほど暴れ、苦しみ、そして死んでい
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