GENESIS・PROJECT
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に凄いよ!運転が凄く上手いんだもん!」
「もう沢山!もう沢山よ!…この事では私には沈黙すると言うただ一つの事のみが相応しいのよ…」
彼女は無頓着に嘲弄する彼女たちに頭を痛くした。今に霊夢は全てを悟っていた。…世界に在る『正義』の観点は、彼らが祭り上げる〈信奉〉の表象そのものに盲信する感動と徹底の善である。彼女はそれを最も倦厭した。奸計、狡猾、暴虐に純潔さを求むる事こそ、彼女の傷口に毒を塗る行為と等しいのだ──。
「うにゅにゅ…私はどうすれば…」
「…お空はここにいなさい。ここなら誰にも狙われないし、あなたを匿ってくれるはずよ」
霊夢はお空にそう伝えると、老婆も頷いた。霊夢はその反応に安堵を得たが、やはり先程の信仰対象に成り得る己の境地を呪った。都合さえよければ奉ることすら躊躇いのない、自己の思う壷のみ動く存在へ吐き気を催す邪悪さに行き場のない感情が生まれるのだ。…私が死ねば彼らの記憶から存在は消され、私が成功すれば彼らに英雄として舞い降りる──と言う荒唐無稽な排中律である。彼女の視界では楽しそうにフランや空が喋っているが、霊夢の内心は尖った心が双方から闘争する惨状を描くのだ。そんな霊夢と彼女たちの間には深い溝があり、恰も霊夢は彼女たちと共に過ごす同胞として演じていた。然し彼女には英雄が極めて俗物的なものに思えて仕方なかった。
彼女にとって、目的を果たして何事も無かったかのように終わり、記憶の隅に『こんな奴がいた』程度に留めてぐらいさえいれば、それが一番良く思えたのである。
「疲れたならここでゆっくりしておいき。…お菓子もあるからね」
「わ〜い!私お腹減ったんだ〜!」
無邪気な笑みを浮かべて空とフランは老婆の後ろをついていき、そのまま家に入っていった。するとそんな二人を見つけた、かつての研究者が姿を現す。髪は相変わらず乱雑極まっていたが、両手を白衣のポケットに突っ込んでは壁によりかかる姿は何処か只ならぬオーラを醸していた。
「どうやらIDOLAを破壊したようだな──流石だ」
「あんた、元々製作に携わった研究者でしょ?……前から疑問に思ってたんだけど、GENESISって一体何よ?力を保存するコンピュータにしても、あんた異形なの見たことないわ。グロテスクで、見る者全てに不快感を抱かせる偶像なんて万人に出来る所業じゃないもの」
研究者は独りでに唸ると、静かに開口した。そこには彼の苦悩が滲み出ているようであり、叡智の幽霊が彼を妨げるのだろう。終わりなき有用の幻想が棚引く靄となり、今に十字架を背負いし原罪の贖罪者として焚刑に処されるのだ。恐らく彼の内心では荒れ狂う義の疚しさが波浪に成り得ては理性を襲撃したのだろう。しかし彼は耐え忍んだ。…今に彼の全てが打ち明けられる。それは彼の理性がそう『宣告』したから
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