第一話 魔王召喚
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杖を支えに立っている頭の爽やかな男だった。
眼鏡をかけた物腰の柔らかそうな印象を受ける男のようだが、サタンを見据える視線は随分と冷たく、それでいて生気の感じる強い意志を感じられた。
だが、そんな強気が続いたのはほんの数舜だ。
糸の切れた人形のように彼も他の生徒達同様に地面に倒れ伏してしまった。
「ふっ。手加減したとは言っても、アレを受けて立っていられるとはな。面白い奴だ」
サタンは興味有り気に口にしたが、左手を掲げ再び魔法陣を展開。
途端に彼らの頭上に現れた青い魔法陣から降り注ぐ光の粒子。それらが彼や他の子供達の身体に吸い込まれるようにして消え去ると、彼等の身体にあった汚れや擦り傷が消えていった。
「な、何をしたのよ?」
「手加減したとしても傷は酷かったしな。一応、治してやってるまでだ」
一瞬とは言え彼らに対し殺意を覚えたのは事実だ。
しかし、一時の感情に流されてとんでもないことをしでかすほど、サタンは子供ではない。故に命を取るような真似はせず、脅すことを目的とした魔法を使用したのだ。
サタンは満足したように笑うことを止めると、胸倉に添えられたルイズの手を優しく掴み服を離すとその場に片膝をついた。
「――えっ!?」
「ルイズと言ったか? お前のおかげで俺は命を救われたようだ。礼を言っておく。だが、俺はいつまでもこの場に留まっているわけにはいかないんでな。俺の為に血を流している部下を見捨てるわけにもいかないし、俺だけおめおめと生きながらえるわけにもいかないんだ」
「ちょ、アンタ何を言ってるのよ!?」
まるで状況が理解できないとばかりに、今度はルイズが表情を困惑色に染め上げる。
先程までの荒れた雰囲気から一転して紳士的な態度に面食らっているのもそうだが、何よりサタンの口にしていることがまるで分からないのだろう。
「俺はこれから魔王城に戻らないといけないんだ」
「――アンタ、本当に何を言ってるの?」
「このお礼はこの世界フレイティアを手中に収めてから返そう」
「だから、何を言ってんのよッ!」
すぐにでも背中に魔族特有の翼を生やし飛び立とうとしていたサタン。
そんな彼を制止させたのは、咄嗟に自分の手を硬く握ってきたルイズの手だった。
柔らかくそれでいて小さなその手に握られた感触は心地の良いものだが、誘惑に負けていては魔王として色々とマズい。
サタンは名残惜しさも感じながら彼女の手を離そうとするも、肝心の彼女自身に手を離す意思が見られない。
「おい、ルイズ。放してくれないか?」
「いやよ! アンタ、何処に行くつもりなのかは知らないけど、使い魔の勝手をみすみす見逃すつもりは無いんだから!」
「――使い魔?」
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